デジタルビジネスの時代に必要な人材マネジメントとは?:指示体系や採用を変革(2/3 ページ)
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などのテクノロジーを活用したビジネスが発展しつつある現在、人材マネジメントの分野には何が求められるのだろうか。「HR」(Human Resource)に詳しいデロイト トーマツ コンサルティングを取材した。
デジタル時代に活躍できる人材を採用し、逃がさないためには?
有能な人材を採用することも、企業にとって非常に重要だ。土田氏は、採用を巡る企業動向について「日本ではまだ発展途上だが、米国ではAIを使って人材の能力を診断するビジネスなどが続々と誕生している」と話す。採用活動にはかなりのコストを要するため、企業はテクノロジーを活用して費用を削減しつつ、いかに優秀な人材を確保するかが競争力を左右するという。
土田氏は、自社の魅力を効率よくアピールして応募者を集めつつ、能力を正しく評価するための施策として「ゲーミフィケーションやシミュレーションを活用した選考が有効」と提言する。
ただ、有能な社員を採用できたとしても、早期退職や他社への流出は避けたいところだ。そこで、社員を定着させるための手段として、土田氏が重要視するのが、企業が取り組むカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の考え方を従業員に当てはめた「エンプロイー・エクスペリエンス(従業員体験)」だ。この考え方を人材管理に応用すると、社員を年代、性別、求める働き方、雇用形態ごとに区分し、それぞれに応じた制度を設けることで、満足度を向上させる施策づくりが可能になるという。
土田氏は、「現在、『働き方改革』が話題になっているが、残業を減らすと喜ぶ人もいる一方、『もっと仕事をさせてくれ』と不満をもらす人も現れる。仕組みづくりを一律で行っていると、働きたい人は辞めてしまう」と説明。「昇進についても、スローなキャリアでいい人もいれば、早く出世したい人もいる。現代ビジネスにおける人材管理では、社員を細かなセグメントに区分し、それぞれに良いエンプロイー・エクスペリエンスを提供できるような柔軟な制度を取り入れるべき」と話す。
しかし、今後はテクノロジーの発展に伴い、多様なIT人材が求められるため、正社員だけでは事業を運営できないケースも考えられる。こうした中で必要な人材を確保するための施策として、土田氏は「組織が成長するためには、特定のIT部門の正社員だけに頼るのではなく、必要な時に必要な人材に来てもらう“人材のアウトソーシング”を行うとよい」と提言する。
具体的には、人材シェアリングサービスやクラウドソーシングを活用して有能なフリーランサーを雇用し、データ分析のアルゴリズム作成などのハイレベルな業務に従事させることが効果的としている。
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