早稲田ラグビー元監督が明かす、失敗リーダーの典型とは?:中竹竜二氏×サイバー役員・曽山哲人氏対談(3/6 ページ)
早稲田大学ラグビー部の監督を務めた4年間で2度の大学選手権優勝を果たした中竹竜二氏。チームを率いるリーダーとして彼はどのようなことに取り組んできたのだろうか。またそこから見えてくる、失敗するリーダー、駄目な組織とは何か。サイバーエージェントの人事を統括する曽山哲人取締役と語り合った。
――早稲田の監督になったとき、最初にどういう目標設定をされたのですか? その前の早稲田は、清宮克幸監督率いる黄金時代だったわけですが。
中竹: 僕は一度も指導したことがなかったので、目標設定の仕方が分かりませんでした。何となく「優勝」と言わないといけないかな程度。ただ、初めに選手たちには「俺は指導できないし、期待しても駄目だから、自分たちで考えてね」と伝えました。そこからスタートしたのです。
すると誤算だったのは、選手たちは今まで強烈なトップダウンのリーダーに引っ張られてきたので、自分たちでそうした物事を考える習慣がなかったのです。
「考えろってなんですか? 僕らはあなたが考えたことをやり切るだけなので、早くアイデアを出してくださいよ!」と喰いかかってくるのです。
それに対して、こちらも「いや、考えるのはお前たちで、俺はサポートする役割だから」と突き返します。そんなやり取りが繰り返されました。
結局、考えたことのない人に、考えろと言っても無理なんですね。そこで初年度は、ラグビーの練習を頑張ったよりも、考えるトレーニングや話し合うことに力を入れました。
――もう少し具体的に教えてください。考えさせるためにどのようなことをやったのですか?
中竹: メンバー全員との個人面談を年に数回やりました。さらに1年間の目標や自分の強み、こだわりなどを記述するシートを用意して、きちんと事前に埋めてから面談に臨むようにさせました。また、レギュラー選手には毎試合後に別途面談していました。
ミーティングにも力を入れました。ミーティング前、チームリーダーたちに次の試合のテーマ、例えば、攻撃と防御のテーマの名称だったり、ゲームプランだったりを考えさせておいて、それに対して僕が質問を投げ掛けるようにしました。
ただ、こうした活動の中で失敗したと思ったのは、どんなチームを作りたいか、あるいは、どうやって勝ちたいかなど、最も大きなテーマをいきなり考えさせては駄目だなということです。
曽山: 正解が出てこないですよね。
中竹: 出てこないし、選手たちの中でも考えはバラバラで、ぶつかってしまいます。
曽山: 余計な調整コストが増えるだけですね。
中竹: 考えろと言っても無理なのですが、一応、「お前たちも考えるようになったね」と承認しながらおぜん立てして、彼らに自己肯定感を味わせていました。けれども、そんなのは当然のように中途半端なので、結局、選手権の決勝戦で負けてしまったのです。
それが1年目で分かったので、大きなテーマは僕が決めるべきだと、2年目はそうしました。
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