チームワークはいらない、それよりも成果だ:中竹竜二氏×サイバー役員・曽山哲人氏対談(3/5 ページ)
早稲田大学ラグビー部元監督の中竹竜二氏は就任2年目で大学選手権優勝を果たした。その華やかな結果とは裏腹に、チームはシーズンを通してバラバラ、まったくまとまりがなかったという。しかし、中竹氏はそれも良しとしている。そのわけとは……?
――評価にもかかわってくるところですね。失敗しても挑戦している選手を評価する。逆に、能力がある選手でも挑戦してないと評価が変わるということですか?
中竹: まさにそういうことです。早稲田のラグビー部には毎年1〜2人、ど素人も入部してきます。地方の進学校から受験して入学し、早稲田に憧れてきましたというタイプがいるのです。
当たり前だけど、そんなやつは同期からいじめられ、先輩からもバカにされるわけです。でも、中には劇的に成長するやつもいるんです。僕はそういう選手を大事にします。
あるシーズン、こんなことがありました。
本当に下手くそで、万年6軍にいた選手を半年間見ていたら、6軍であることは変わりませんでしたが、ある試合でフェーズ(攻撃の一連の流れ)が20回も続いたとき、そのフェーズの中で、この選手が普通にパスしてボールを投げていたのです。大したプレーではないのですが、以前は毎回ボールを落としていたのに、ノーミスで20フェーズこなしているのを見て感動しました。
でも、ほかのコーチ陣は誰もそこに気付いてないし、選手たちもそいつがすごいとは思っていないわけです。普通のプレーにすぎないわけですから。改めてビデオで見ると、明らかに成長しているのが分かりました。
そこでビデオを編集して、ミーティングで全部員に見せたのです。まず何も言わずに見せて、「何が言いたいと思う?」と選手たちに問い掛けましたが、誰も答えられませんでした。
「お前ら、半年前の××を覚えてる? この20フェーズをノーミスでやれるって、どれだけの成長か分かる? こいつよりこの半年間で自信持って成長したと言えるやつはいるの?」
そうしたら全員下を向いたんですよね。
「お前ら、こいつのことバカにしてたし、今もバカにしてるかもしれないけど、お前ら絶対に抜かれるよ。抜かれたときにはもうこいつの成長のスピードに勝てなくなるから。どうやってこいつがここまで成長したか、普段の生活をどう変えたか、きちんとリスペクトした方がいいんじゃないの?」と言いました。
それから選手たちの態度が変わったのです。同じポジションのレギュラーの選手が「一緒にキックやろうぜ」など、コミュニケーションを取るようになりました。
成果とは別に、組織として何を文化にするか、何を大事にするかを考えるのは必要でしょうね。
曽山: 僕も藤田から「リスクを取るやつを評価して」「リスクを取って失敗したやつは必ずねぎらって」と何度も言われています。
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