社食なのに夜メイン? 発想を変えて理想を実現:既成概念にとらわれない(3/4 ページ)
「こんな社食があったらいいな」を実現するために、従来の社食のイメージから発想を大きく転換した企業の取り組みとは……。
タスクフォースメンバーが集結
半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンが2011年に開設したカフェテリアの名前は「solae(ソラエ、eの上にアクセント記号)」。赤坂本社(東京都港区)の25階、都心の眺望が楽しめる社食だ。
工場を有する他の事業所と同じように、本社にも食事場所や打ち合わせスペースを提供しようと、1年かけてオープンした。特に、「社食でどんな時間を過ごしたいか」「どんな気持ちになりたいか」を突き詰めるコンセプト固めに力を入れた。各部署から代表者が集まった「タスクフォースメンバー」の12人がチームを組み、コンセプトやネーミング、ロゴマークから考えていった。
プロジェクトをまとめたコーポレートアドバイザー、コーポレートブランド推進担当の安原もゆる氏は、その狙いについて「上からの押し付けではなく、カフェテリアで過ごす時間と空間に愛着を持って、自分ごととして捉えてほしい」と説明する。
タスクフォースメンバーが導き出したコンセプトは「おいしい笑顔」。それを実現するために、従来の社食のイメージから発想を大きく転換したアイデアを形にしてきた。
陶器の食器を実現
もちろん、簡単ではない。例えば、食器だ。プラスチック製ではなく、陶器を使用している。社食のような多くの人が利用する食堂では、重くてかさばり、落とすと割れてしまう陶器は、扱いにくい。それでも、「家庭でも使っている陶器の食器で食べると、おいしく感じられる」(安原氏)という強い思いから、社内を説得して実現にこぎつけた。
「割れやすい」という問題には、食器を載せるトレーを工夫して対応した。トレーの表面に、滑り止めの加工をしたのだ。運んでいる途中に少し傾けても、滑り落ちることがない。また、「会計で使用するICチップを食器の裏に貼りにくい」という問題もあった。ICチップの製造メーカーに相談し、ICチップがしっかりと貼りつく形状の食器を研究。その形状の食器をそろえることで解決した。
「大事なのは“何を実現したいか”ということ。既成概念を払拭(ふっしょく)しないといけない」と安原氏は話す。結果として、陶器にしたことで食器が大事に使われるようになり、補充も少なくすることができたという。
他では見られない発想のアイデアは、厨房にもある。食堂運営会社のスタッフが着用するユニホームだ。素材からデザインまで、東京エレクトロンが開発した。タスクフォースメンバーから、「スタッフさんにも気持ちよく働いてもらいたい」という意見が出たことから実現したという。スポーツウェアメーカーと共同開発し、耐油、耐火の機能を高めた特殊素材を使ったユニホームを作成。厨房で油がはねても、けがをしないように、という思いを込めている。
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