ユニリーバ、大学1年生も対象の通年新卒採用を導入:AIなど活用し
ユニリーバ・ジャパンがAIなどを活用した通年新卒採用制度を導入。大学1年生も就職活動に参加でき、「過去よりも未来の能力を重視」するという。
ユニリーバ・ジャパンは、AI(人工知能)などを活用した通年新卒採用制度を導入する。大学1年生からも就職活動に参加できるのが特徴で、採用方法もゲームなどを取り入れてテクノロジーを活用し、過去よりも未来の能力を重視する。
新制度「UFLP365」(UNILEVER FUTURE LEADERS PROGRAMME)は世界中どこからでも応募可能な通年採用。2016年冬の選考から適用し、採用の質の向上や採用担当者の負担が軽減されたため、6月から正式導入する。
UFLP365の選考過程は、インターンシップを実施する場合と実施しない場合で大きく分けて2つあるが、いずれも、(1)Web登録、(2)AIを活用したゲーム選考、(3)与えられたテーマの回答を、動画を撮って送信するデジタル面接、(4)研修施設「ディスカバリーセンター」で実際の仕事に近い課題に取り組むロールプレイ――を経て役員面接を行い、内定を出す。
最終面接や入社のタイミングが選べるのも特徴で、最終面接はディスカバリーセンターでの選考合格から2年以内、入社は内定から2年以内と、それぞれ最大2年の猶予がある。また、一度選考から外れても、応募から1年空ければ何回でも選考に参加できる。
具体的に選考はどのようなスケジュールになるのか。一般的なケースは、大学3年の4月にWeb登録を行い、ゲーム選考とデジタル面接ののち、8月にインターンシップを実施。最終面接を10月に行い内定を得て、卒業後の4月に入社するというものだ。
猶予期間を使えば、大学1年から就職活動を行い、大学3年の5月に内定を得るというケースもありうる。
これまでの採用制度では、(1)海外留学中の学生などが選考に参加しづらい状況にあった、(2)外資系企業の選考スケジュールが日本の一般的な就活スケジュールと異なるために、ユニリーバを知るタイミングが遅く、選考参加ができない学生がいた――などの課題があったという。デジタル面接や通年採用を取り入れることで、これらの課題を解消した。
また、UFLP365導入の背景には、学生の価値観の変化もあるという。今の20代は「たくさんの選択肢の中から『自分で選ぶ』ことを重視している」「デジタルネイティブである」「積極的に情報収集と情報発信を行う」「仕事もプライベートも自分らしく」という特徴を持っていると分析。こうした学生にアピールするために、最大4年の猶予を設定した。
採用したい人材が、猶予期間中に他社を選んでしまう心配はあるというが、「猶予期間でさまざまな企業を知り、ユニリーバの良さを分かってもらいたい。今の学生は、多様な選択肢から自分で選んだということを大事にしている」(ユニリーバの島田由香 人事総務本部長)という。
AI活用選考の効果
ゲーム選考とデジタル面接は、ユニリーバが全世界共通で16年から行っている取り組み。日本では同年冬からスタートした。
ゲーム選考は、米pymetricsのゲームを採用。Web上で「早くクリックする」「クリックして風船を膨らませる」などの12個のゲームを行い、その行動によってAIが能力やリスク意識などのプロフィールを判定する。全世界のユニリーバ若手社員がプレイした結果をもとにアルゴリズムが作成されており、より同社にマッチする人材を採用できる。
デジタル面接は、米HireVueのデジタル面接プラットフォームを利用。出題された独自の課題の回答を、スマートフォンやタブレットで録画して送信する。録画したデータをAIが分析し、能力や愛称を判定する。英語などの言語では、既にAIによる判定が可能になっているというが、日本語モデルは構築中。現在は採用担当者が映像を1つ1つ確認しているが、17年冬にはAI活用を目指す。
島田氏は「16年冬から実験的に導入したが、選考の質や、採用担当者の効率が上がった。求めている人材を採用できている実感がある」と語る。エントリーシートを何百枚も見る負担が減るとともに、判断基準が明確になった。デジタル面接で行動や考え方が明確に分かり、課題に対する反応も比較しやすいといったメリットもあるという。
「16年冬の選考では、ユニリーバが求めている『グローバルの課題を自分ごとにしている』『大きな価値観、深い信念をもって課題に取り組む』『透明性の大切さを知っている』『他人に投資する』という人材が最終面接に集まった。初めての選考プロセスだったが、高い効果を感じている」(島田氏)
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