“時代遅れ”のデータ活用では生き残れない:顧客接点をデザインせよ(1/4 ページ)
テクノロジーの進展によって、あらゆる情報を収集・分析できるようになってきた。こうした中で、企業が競争に勝ち続けるためには「顧客接点をデザインする力」が求められている。
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスなどのテクノロジーが市場環境を急速に変えようとしている。そうした中、業種・業界問わず企業の関心が高まっているのがビジネスのデジタル化、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」である。
激変する環境の中で企業が生き残るためには、今まで以上にビジネストレンドを押さえた戦略を打ち続けなければいけない。そこで、ITmedia ビジネスオンラインでは、DXに関する有識者や専門家たちの意見をシリーズでお伝えしている。今回は、ボストン・コンサルティング・グループでデジタル&アナリティクス領域の日本リーダーを務める高部陽平パートナーにDXを推進していくためのポイントを聞いた。
従来のデジタル化と近年のデジタル化
――DXというワードを良く耳にするようになりました。関心を持つ企業も増えているようですが、その背景について教えてください。
高部: まずDXの定義ですが、ボストン・コンサルティング・グループとしては「ビジネスのデジタル化」という幅広い概念として捉えています。ただ、デジタル化自体は20年前から進められてきました。例えば、実店舗がなくてもネットショップで購入ができるようになるなど、ユーザーインタフェースのデジタル化は既に進んでいたわけです。
では、近年言われているデジタル化と従来のデジタル化は、何が違うのか。それは、前述したようなインタフェース部分だけの話ではく、バックヤード側にも大きく浸透した点にあります。
例えば、マーケティングにビッグデータやAIを有効活用できるようになったことで、誰が、いつ、どこで、どんなモノを、どんな状況で買っているのか、詳細かつタイムリーに分かるようになりました。以前よりも、必要としている人に必要なサービスを無駄なく、早く届けられるようになり、リードタイムも短くなってきています。
こうしたことが当たり前になっていく世界で、単なるインタフェース部分のデジタル化だけで競争優位性を保つことは難しくなりました。「オペレーションのあり方」「サービスの届け方」などをビッグデータ・AIの活用によって変革し、付加価値を高めていかなければ淘汰(とうた)されてしまう時代がきたということです。
また、生産性向上が求められる社会的背景もあります。日本のように労働生産人口が減り続けていく中では、今から人の業務を自動化する仕組みを構築し、オペレーションを抜本的に変えていかなければ、ビジネスの継続は不可能という見方も当然あります。
こうした背景もあってデジタル技術やそれが生み出すデータをいかに有効活用し、業務の効率化を進めるかということに企業の関心が高まっているのです。特にこの1〜2年で急速に高まってきていると思います。
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