“時代遅れ”のデータ活用では生き残れない:顧客接点をデザインせよ(4/4 ページ)
テクノロジーの進展によって、あらゆる情報を収集・分析できるようになってきた。こうした中で、企業が競争に勝ち続けるためには「顧客接点をデザインする力」が求められている。
デジタル化戦略を統括するリーダーが必要?
――DXを推進していく上での課題は何でしょうか。
高部: テクノロジーに対する理解も大切ですが、それ以上に改革の進め方も重要になります。具体的には、「早く試して、早く成果を出す」というアジャイル的な考え方が必要なのです。
大きなIT投資をする場合、多くの企業では2〜3年掛かりの計画で進めていくケースが多いのですが、そこで問題になるのは、その間にその技術が陳腐化してしまう可能性があるということです。
ですから、早く導入・運用し、短いスパンで検討・改善を繰り返していくのです。もし、導入後に新しい技術が生まれたら、方針を変更して、すぐに新しい技術を取り入れる。こうした柔軟性が求められます。
あと、組織横断で取り組むための体制作りですね。冒頭で紹介したような「部分的なデジタル化」については、多くの企業が取り組んでいますが、新しいサービスが生まれる、あるいはビジネスモデルが大きく変わっていくようなデジタル化の取り組みはまだ始まったばかりです。
この変革には、「働き方の見直し」「外部との連携」「データの集め方」など、全社的な取り組みが必要であり、あらゆる要素を変えていかなければなりません。前述した顧客との接点をデザインするような新しい役割も必要になります。
また、ユーザーと接点を持つ部門、製品を作る部門、データを分析する部門――など各部門が、組織横断で取り組めるかどうかが問われます。このように、さまざまなファンクションのあり方を変えていきながら、1つの目標に向かって連携していかなければならないという課題があります。
これをスムーズに進めていくための1つの有効な方法として「チーフデジタルオフィサー」(CDO)の配置が挙げられます。CDOはデジタル化戦略を統括し、組織横断で変革を推進するリーダーです。スキルとしては、テクノロジーに精通しているだけでなく、ビジネスに対する理解や高いコミュニケーション能力も求められます。こうしたデジタル化推進の“シンボル”を社内におくことで、スピード感を持って取り組めるようになる部分もあると思います。
もちろん、既に組織としてデジタル化を進める土壌ができ上がっていれば、CDOは必要ありません。CDOのような存在がいなくても、全社的にデジタル化への理解が高まり自然と改革を実行できる組織であることが理想です。
しかし、今は過渡期です。いずれはその土壌ができ上がるにしても、この過渡期においては、いつでも頼れる“期間限定”のリーダーが必要になるのかもしれません。
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