鋳造メーカーの炊飯器は何が違うのか 舞台裏に迫る:あの会社のこの商品(3/4 ページ)
10万円クラスの高級炊飯器が定着し、家電メーカー各社が開発に力を入れている。このような中で、鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」をヒットさせた愛知ドビーも、「バーミキュラ ライスポット」で参入。異業種からの参入ながら、ユニークなデザインや優れた機能が評価され、快調に売れている。
一本の溝が吹きこぼれを防止する
また、使用するバーミキュラ鍋が、それまでのものと比べると微妙に異なっている。最大の違いは、吹きこぼれないようにしたこと。バーミキュラは無水調理鍋なので、通常は強火を使わないが、ご飯を炊くときは強火を使わないとおいしく炊けない。その一方で、バーミキュラの特徴である密閉性の高さは、ご飯をおいしく炊くためには欠かせなかった。
吹きこぼれないようにすることと密閉性は両立しないが、圧力鍋のような部品を追加する構造を採用すれば解決できる。しかしそれは、「鋳物屋の美学に反する」(土方氏)。鋳物屋らしく形状で解決することにした。
解決策として採用されたのが、フタの裏に「フローティングリッド」と呼ばれる溝を一本追加したこと。フタと本体が合わさるところに、やや長めの溝を追加することで、強火で炊いて中の圧力が高まったときに、そこだけ少し浮き蒸気を逃がすようになった。これだけで、夜寝ているときも吹きこぼれを心配することなくご飯が炊けるというわけである。このように書くと「簡単な工夫じゃないか」と思われたかもしれないが、深さや長さ、幅、場所が決まるまでに、少なくとも30近くの試作をつくって検証したという。
フタに関してはフローティングリッドだけでなく、炊きあがったご飯のべちゃつきを抑えるために、「ダブルリッドリング」と呼ばれるリング状の突起を裏に2本追加。これにより、おひつとしても使えるようにした。また鍋本体については、対流を起こしやすいよう丸みを帯びたものに変更した。
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