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鋳造メーカーの炊飯器は何が違うのか 舞台裏に迫るあの会社のこの商品(4/4 ページ)

10万円クラスの高級炊飯器が定着し、家電メーカー各社が開発に力を入れている。このような中で、鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」をヒットさせた愛知ドビーも、「バーミキュラ ライスポット」で参入。異業種からの参入ながら、ユニークなデザインや優れた機能が評価され、快調に売れている。

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小売店の販売員を教育しながら取り扱い店舗数を拡大

 こうして完成したバーミキュラ ライスポットは、年間5万台を目標に販売を開始。現在のところ、予想以上に売れており、発売から半年近くで3万1000台以上も売れている。

 評判は各メディアを通じて拡散していったが、販売に関しては当初、愛知ドビーの社員が販売員として常駐する25店舗のみに絞った。現在は、同社社員が常駐しないところでも信頼できる家電量販店での取り扱いも徐々に増やしているところで、5月末時点での取り扱い店舗数は50近くになった。2017年内に100店舗まで拡大したいという。

 しかしなぜ、当初は販売店舗を限定したのだろうか? その理由を土方氏は、次のように話す。

 「当初から、きちんと接客しながら良い点、悪い点ともに伝えて販売できるところでないと販売したくないと考えていました。調理もできる、鋳物ホーロー鍋がむき出しになっているなど、独自のコンセプトに基づく特徴をしっかり説明できないと、お客さまの不満足につながりかねないからです。まず、当社社員が販売員として店頭に立ち、店舗の販売員に接客の様子を見てもらい、売り方を理解していただくようにしています」

 ユーザーの満足度は、小売店の接客レベルがカギを握っていた。そのため、一定の接客レベルに達していない店舗には取り扱いを認めていないということである。小売店の販売員には、店頭での接客の仕方だけでなく、同社での調理実習も行い、味を憶えてもらうこともしている。


炊飯だけでなく、煮たり炒めたりすることも可能。小売店の販売員は実際に使って調理を経験し、特徴を踏まえた上で接客にあたる

 また、輸出に関しては現在、電圧の問題や法規制の対応などを調べているところ。これらが順調にクリアできれば、来年早々には欧米への輸出が始まるという。

 炊飯器としてだけでなく、煮る、炒めるなどさまざまな調理に対応する万能調理器としての顔も持つバーミキュラ ライスポット。今後も、料理が楽しくなるという視点から新たなアイテムの展開も考えているとのことだが、必ずしも家電にはこだわっていないという。

 次もきっと、斬新で、誰もがアッと驚くものになる予感がする。

著者プロフィール:

大澤裕司(おおさわ・ゆうじ)

 フリーランスライター。1969年生まれ。月刊誌の編集などを経て、2005年に独立してフリーに。工場にまつわること全般、商品開発、技術開発、IT(主に基幹系システム、製造業向けITツール)、中小企業、などをテーマに、雑誌やWebサイトなどで執筆活動を行なっている。著書に『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)がある。


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