「アリペイ」が中国社会に与えたインパクト:モバイル決済の最先端(3/3 ページ)
モバイル決済の普及が進んでいない日本。一方で中国は「アリペイ」を中心に、モバイル決済やフィンテックサービスが爆発的に普及している。モバイル決済の最先端の社会では、どのようなことが起こっているのだろうか。
アリペイ日本展開の可能性は?
アリペイは日本に上陸はしているが、国内の消費者が日常的に使えるモバイル決済サービスとしては展開していない。今後、日本の決済サービスとして進出する予定はあるのだろうか。
「アリペイというブランドやアイデンティティーは、中華圏では強いですが、日本ではアピールにならない。むしろ心理的なハードルになりうる。日本人が使う“顔”となるサービスは、アリペイではなくて日本企業によるものになると考えています」
そう語るのは、アントフィナンシャルジャパンの岡玄樹社長。アリペイはさまざまな国で展開しているが、意外なことに「アリペイ」の名を冠しているのは香港のみ。その他の国では現地企業と提携をしている。「Kakao Pay」(韓国)、「Ascend」(タイ)、「Globe」(フィリピン)、「Emtek」(インドネシア)、「Paytm」(インド)――アリペイはこれらのサービスのバックエンドのサポートを行うことで、自社の決済網を世界に広げている。
では、日本においてアリペイとの“運命共同体”になりうるプレイヤーはどこか。「1つのアプリプラットフォーム構想のもとに、さまざまなサービスを展開している」という点ではLINE Payが近いようにも見える。また、Origamiは既にアリペイと提携して展開しており、関係も深い。しかし岡社長は「どこと運命をともにすれば日本で勝つ可能性があるか、吟味検討している段階」と明言を避ける。
「LINEは『コミュニケーション』の会社。LINE Payも、コミュニケーションから立ち上がって、決済に移行させたい考えでしょう。一方われわれは、自分たちをフィンテックの会社だと考えています。私たちが重要視しているのは、決済を入り口にしつつも、決済だけではない世界。決済サービスとは違う見え方をしているパートナーに期待しています」
モバイル決済は、まずはインバウンド需要の取り込みという面で必要とされている。さらに長期的に見れば、グローバルで進みつつある“モバイル経済圏”に取り残されないためにも必要だ。その時シェアを握るプレイヤーはどの企業になるのだろうか。
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