米国投資家が語る 宇宙ビジネスで“張る”べき領域とは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
米国・サンフランシスコで開催された宇宙ビジネスカンファレンス「NewSpace 2017」において、例年以上に投資家によるセッションが目立った。彼らは今何に注目するのか?
資源探査・開発と宇宙アクセス革命もホットトピック
今回はDeep Space(深宇宙)がホットトピックとなっていた。
政府レベルの取り組みとして宇宙資源探査・開発を進めるルクセンブルク政府からはシュナイダー副首相が駆けつけてキーノートを行い、「資源開発産業を現実にすることを目指す。既に60社の企業とパートナーシップを結び、220百万ユーロの資金をコミットしている。さらにベンチャーキャピタルと協業して新たなファンドの組成を計画している」と力強く語った。
宇宙ロボットベンチャーの米Offworldは、重量53キログラム、30センチメートル×60センチメートル×20センチメートルのロボットを開発しており、同社が目指す究極のゴールは太陽系で数百万台の産業用ロボットを労働力として提供する事業だ。当面の目標として地球上の資源採掘・建設用途向けのロボット事業を行い、将来的に月面ロボットや火星ロボットの開発へとつなげていくという。当面の開発費に関しては既に資金調達済みとのことだ。
最後に、宇宙アクセス革命も引き続き注目が集まる。昨年から同カンファレンスをスポンサーしている米Blue Originは複数のパネルに登壇、宇宙アクセス革命の意義を1980年代の高速道路整備や2000年代のネットインフラ整備時代になぞらえた。また、先日初の技術実証に成功した小型ロケット「Electron」の開発を進める米Rocket Labは「打ち上げのコストを下げるとともに、頻度を増加することが小型衛星産業のために重要だ」と語っており、目指すのは毎週打ち上げサービスとのことだ。
このように高い熱気は変わらずとも、少しずつと投資領域や注目領域が変化しつつあり、その見極めが重要なのが今のNew Space産業と言えるだろう。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク業界、自動車業界、宇宙業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙民生利用部会および宇宙産業振興小委員会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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