“意識高い系”の学生には「ダメ出し」が必要だ:常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)
近年、盛り上がりを見せているインターンシップの季節がやってきた。意識高い系ウォッチャーとしてはたまらない機会である。10年前から変わらず「インターンシップの猛者学生」が毎年必ずいるからだ。
企業はしっかり、学生にダメ出しをしよう
インターンシップ猛者学生は、学生同士で共同作業を行う「グループワーク」の仕切りも慣れている。
「じゃあ、最初に役割分担を決めましょう」「30分あるので、課題の抽出に5分、取り組み事項の決定に5分、提案作りに10分かけましょうか」みたいなトークを連発する。さらには、あまり発言しない学生に「○○さんはどう思います?」などと振る。人事担当者にアピールするかのように仕切るのだ。
この手の学生にもツッコミどころはある。よくあるのは、グループワークで何かを提案するときに「SNSを使って拡散させます!」という内容を盛り込む奴らだ。
「すごい提案をしてやったぞ」と思っているかもしれないが、そうそう拡散などしない。企業がどれだけ拡散に苦労していることか。実際に拡散しているものは、コンテンツや広告に相当お金をかけている場合が多い。この連載だって、「今週は拡散するかな……」と、いつもドキドキしているのだ。一番拡散したのは「BOOWY好き上司との付き合い方」だったな、そういえば。
インターンシップに熱心なのは結構だが、企業にチヤホヤされて調子に乗ってしまっては困る。企業はしっかりと、学生をダメ出ししてあげないといけない。
有効なのは、学生の考えに対して細かく質問することだ。「その企画はどんな人がどんなときに喜ぶの?」「実現するための課題は何? その課題はどうやって解決するの?」といった具合にだ。また「机上の空論」「頭でっかち」などとしっかり言ってやるのも良いだろう。
さらには「それって元ネタ、ドラッカーでしょ? しかも、それドラッカーの本じゃなく、『もしドラ』でしょ?」みたいに、受け売りを指摘してあげるのも効果的だ。
多くの学生にエントリーしてもらいたいという企業側の気持ちも分かるが、学生に気付きを与えることがインターンシップ本来の目的だ。ミスマッチをなくす上では、企業にとっても学生にとっても大切なことである。
ちやほやせず、しっかりとダメ出しすることを企業に期待したい。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
関連記事
- プレミアムフライデーは何がいけなかったのか
プレミアムフライデー(笑)。今となっては、口にするのも恥ずかしい。これほど皆がこの施策にノッてこれないのは筋が悪かったからではないだろうか。いや、そもそもムリゲーだったというのが、私の見解である。 - ビジネス界は「あれはオレがやりました」で溢れている
雑誌のインタビューに出てくる「俺がやりました」的な奴は、疑ってかかったほうが良い。期待するほどそいつは仕事していない。実際は、みんながそれなりに仕事をしているのだ。 - BOOWY好きの上司と飲むときに気を付けたいこと
群馬県高崎駅に伝説のロックバンド「BOOWY」と書かれたポスターが現れ、盛り上がっている。サラリーマン的に問題なのは、今月の会社の飲みの席で、男性上司から高い可能性でこの話題が出ること、それにどう対応するかということではないだろうか。 - 「残業(長時間労働)は仕方ない」はもうやめよう
電通の新入社員が過労自殺するという事件が起こり、話題になっている。政府はいま「働き方改革」を進めて長時間労働の是正に取り組んでいるが、繰り返されてきたこの問題を本当に解決できるのだろうか。労働問題の専門家、常見陽平氏に話を聞いた。 - 従業員を“うつ”から守る 富士フイルムのメンタル疾患予防法とは?
福利厚生といった観点だけでなく、経営の観点からも「メンタルヘルス対策」が重要視されるようになった。今回は、3年前からデータを活用したメンタル疾患の予防を行い、堅実に成果を上げている富士フイルムの取り組みを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.