アニメ制作会社の平均売上高、10年間で4割減収:「君の名は。」好調の裏で
帝国データバンクがアニメ制作企業の経営実態調査を発表。2016年はアニメのヒットが続いたが、1社当たりの平均売上高は10年間で4割減収しているという。
記録的な大ヒットとなった「君の名は。」をはじめ、劇場版アニメやテレビアニメが好調だった2016年。アニメ産業市場は2兆円を超える見込みだ。その一方で、アニメーターの労働問題の顕在化や、中堅アニメスタジオの破産、テレビアニメの制作スケジュール遅延による放送延期なども続いた。
16年のアニメ業界の経営実態はどのようなものだったのか。10年間でどのように推移してきたのか。帝国データバンクが8月22日に調査結果を発表した。
アニメ制作企業230社の売上高総合計は、07年以降増加傾向で、16年は過去最高の1813億4700万円だった。しかしその背景には制作本数増加や国内新興企業の参入などがあり、1社当たりの平均売上高は、07年の12億3600万円をピークに減少。制作費が安価な中国・韓国企業の台頭などもあり、16年は7億9900万と10年間で約4割の減少となった。
制作業態別の平均売上高を見ると、直接制作を受託し完成させる「元請・グロス請」は平均17億2200万円(前年比1.9%増)と下げ止まった。帝国データバンクは「近年主流となっている製作委員会に投資する制作企業もあり、ライセンス収入等の恩恵を受けやすいことも影響しているとみられる」と分析している。一方、下請けとして制作に携わる「専門スタジオ」は2億7700万円と、7年間連続で3億円を下回る状態だ。
収益動向は、増益企業が44.2%、減益企業が46.5%と明暗が分かれる結果に。減益企業が6割を超えた15年と比較すると回復したものの、制作本数増加に伴う下請けへの支払いの増加、アニメーターを確保するための人件費増加、設備投資の必要などがあり、「収益環境は厳しくなっている」という。
帝国データバンクは「今後もアニメ産業が発展を遂げるためには、アニメーターの経済的な底上げや環境整備を可能とすることや、制作本数に依存しない収益確保が不可欠な事項となる。そのためには、下請制作会社を含めた十分なアニメ制作費の確保など、アニメ産業全体の抜本的な収益構造改革などの改善策が早急に求められる」とまとめている。
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