社外取締役や相談役・顧問をどうする? 経産省がガイドライン:待ったなし! 日本のコーポレートガバナンス改革(1/2 ページ)
日本の経済成長に向けて政府が力を入れるコーポレートガバナンス改革。しかし、実際に何をすべきか分からない、どこから手をつければいいのか迷っている企業も多いだろう。そうした企業を支援するため、経済産業省はコーポレートガバナンスシステムに関するガイドラインを策定した。その狙いなどを担当者に聞いた。
特集「なぜ日本企業はガバナンス改革が必要なのか?」:
安倍内閣は成長戦略の1つとして「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」を掲げ、法改正など矢継ぎ早にその対策を打ち出している。一気に押し寄せてきたコーポレートガバナンス改革の波に対して、日本企業はどう対応すべきなのだろうか? 課題は何か? 有識者などの声から次の一手を探る。
日本経済の復活が叫ばれて久しい。それを具現化するために安倍晋三内閣はさまざまな成長戦略を掲げている。その1つが「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」だ。これによって日本企業の中長期的な収益性や生産性を高め、グローバルで“稼ぐ力”を身に付けることを目指すという。
具体的には、2014年に会社法を一部改正し、上場企業などに社外取締役の設置を促す規定が盛り込まれた。また、15年には、上場企業が守るべき行動規範を示した指針である「コーポレートガバナンス・コード」の導入で上場企業が2人以上の独立社外取締役を設置することを求めた。さらに、17年6月には企業の「相談役」や「顧問」の情報開示制度を打ち出し、これまで不透明だった彼らの業務内容などを開示することにした。この制度は来年1月1日から実施される。こうした取り組みによって株主と企業の関係性を強化し、資本市場から長期的な投資を促すことが狙いである。
背景にあるのは、過去20年間、日本企業の稼ぐ力が諸外国と比べて低迷し、株価指数に表される企業価値も欧米や新興国と比べて一人負けしている点だ。16年の株価指数の値を1990年の値で割った数字を比較すると、米国やドイツが7、インドや中国は24であるのに対し、日本はわずか0.7しかない。こうした状況を打破するためにコーポレートガバナンス改革が有効というわけだ。
社外取締役には外部の社長経験者を
ただし、コーポレートガバナンスにかかわる日本企業の課題は多く、一朝一夕に改革できるものではない。例えば、事業ポートフォリオの適切な見直しが不十分で、非中核事業や撤退が必要な事業に無駄なリソースを割いたり、社内コンセンサスを重視する結果、経営の意思決定に時間を要したり、CEOや経営陣に求められる資質や後継者の育成方針が不明確だったりと、日本企業の課題は枚挙にいとまがない。
加えて、政府がコーポレートガバナンス改革をうたっても、実際に何をすべきか分からない、どこから手をつければいいのか迷っている企業が多いのも実情だろう。
そうした日本企業を支援するために、このたび経済産業省はコーポレートガバナンスシステムに関するガイドライン(CGSガイドライン)を策定、発表した。CGSガイドラインでは、800社を超える企業からのアンケート回答を基に、企業がコーポレートガバナンス改革に取り組む意義に始まり、取締役会の運営や社外取締役の活用、相談役、顧問のあり方、指名委員会や報酬委員会の設置目的など、具体的なアドバイスが示されているのが特徴である。
例えば、社外取締役の活用に関して、現状は社長や副社長、会長などが社外取締役の候補者を見つけ出している企業が多いが、「社外取締役が役割を十分に果たしている」という回答にならなかった企業は46.4%に上っている。求める人材としては、「他社の経営陣幹部の経験者」を挙げる回答が約8割であることから、CGSガイドラインでは経営経験者を中心とした社外取締役の人材市場の拡充が必要だとする。
「内部昇格で取締役になることが多い日本企業は、社内の経験に頼って経営に当たってしまいがちですが、これでは国内外の企業との競争に勝つことは難しいです。社外取締役のうち1人は、社外で経営の実績を積んだ人物であることが好ましいと考えます」と、経済産業省 経済産業政策局 産業組織課の安藤元太課長補佐は述べる。
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