社外取締役や相談役・顧問をどうする? 経産省がガイドライン:待ったなし! 日本のコーポレートガバナンス改革(2/2 ページ)
日本の経済成長に向けて政府が力を入れるコーポレートガバナンス改革。しかし、実際に何をすべきか分からない、どこから手をつければいいのか迷っている企業も多いだろう。そうした企業を支援するため、経済産業省はコーポレートガバナンスシステムに関するガイドラインを策定した。その狙いなどを担当者に聞いた。
相談役や顧問の役割とは
社外取締役の選定よりも日本企業において疑問視されているのが相談役、顧問の存在だ。読者の皆さんにも、自社の相談役や顧問が日ごろどのような役割を果たしているのか不明瞭な人は少なくないだろう。実際、今回の相談役および顧問の情報開示制度がスタートするのもそれによるところが大きい。
CGSガイドラインでのアンケート調査によると、全体の78%の企業で相談役・顧問制度が存在し、相談役・顧問が在任中である企業のうち社長経験者が在任中なのは58%だった。役割については、「役員経験者の立場からの現経営陣への指示・指導」が36%、「業界団体や財界での活動など、事業に関連する活動の実施」が35%となっている一方で、役割を「把握していない」「特にない」という回答も一定数存在している。
社長出身者などが相談役や顧問に着任する弊害として、現役経営陣のやり方に口出しするような悪影響や、社員や社外の取引先などから見て、実質的な経営トップが分からない事態に陥ってしまうようなことが散見される。これが経営の意思決定の足かせになることは言うまでもない。
ただし、安藤氏は「必ずしも相談役や顧問制度が悪で、これを一律に見直すべきだということではありません」と強調する。なぜなら、業界団体や財界での無償の活動が事業成長に貢献していたり、社会的に意義のある活動に従事することが会社のCSR(企業の社会的責任)につながっていたりすることも多々あるからだ。現行の制度を見直すかどうか、顧問や相談役にどのような人材をあてがうかについては、各社の置かれた状況や考え方などさまざまであるため、一概にこうすべきだという正解はないが、あくまでも「持続的な企業価値の向上を前提に取り組む必要があるでしょう」と安藤氏は説明する。
なお、相談役や顧問として企業に残らないことになった社長、CEO経験者は、積極的に他社が社外取締役として登用することも、企業や業界の垣根を超えて経営の知見を幅広く活用するという点で大きな意味があるとCGSガイドラインは明記している。
今後、経産省ではCGSガイドラインを土台に、業種業態問わずさまざまな日本企業の取り組みをフォローアップしていく。今年度中に、コーポレートガバナンス改革に関する企業の取り組み状況をまとめ、広く情報発信していく予定だ。
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