酒飲みの相棒「ハイサワー」 成功の舞台裏:あの会社のこの商品(3/4 ページ)
焼酎を割って飲む場合、かつては水かお湯しかなかった。しかし現在は、飲食店に行けば、焼酎をさまざまな割り材で割ったサワーが当たり前のように置かれるようになった。この新しい飲み方を広めたきっかけの1つが、博水社のハイサワーである。誕生から現在までの軌跡をお伝えする。
断念していた過去のアイデアも実現
飲食店では新しいレシピのほか、新商品のアイデアも得られる。その典型例が、03年発売の「ダイエットハイサワー レモン」だ。誕生のきっかけは、スナックやキャバクラで見聞きしたこと。田中氏は次のように話す。
「スナックのママやホステスたちは、夜遅くなると飲み疲れ、休むためにハイサワーをそのまま飲んでいたりします。それに、毎日酒を飲んでいれば太ります。ハイサワーでもカロリーが低く太らないものがあったら……という声が聞こえてきたので、太ることを気にすることなく安心して飲めるものを開発することしました」
06年には「ハイサワー ハイッピー」を発売する。ハイサワー ハイッピーは、レモン果汁を使ったフルーツビアテイスト飲料。女性に人気のレモンビアテイストや、糖質やカロリーが気になる人にオススメのクリア&ビターテイストなどがある。
開発は、ハイサワーをつくる前にチャレンジしていたというノンアルコールビールテイスト飲料のレシピを元にした。ホップの扱いに繊細さが要求されたことから、完成までに4年を費やすことになった。思いがけず苦労したが、完成を誰よりも喜んだのは、先代社長の田中氏。自身が実現できなかったノンアルコールビールテイスト飲料の開発を、娘である現社長が実現してくれたのだから、それは当然のことであろう。
そして同社は13年、初のアルコール飲料「ハイサワー缶 レモン」を発売する。「缶チューハイは大手企業が独占する市場なので、開発するつもりはなかった」とはが言うが、方針を変更した理由を次のように話す。
「焼酎をハイサワーで割って飲んでいる人たちは皆、『アウトドアや移動時に飲めない』と言います。移動している時に飲めるものが欲しいという声が多かったことから開発することにしました」
中身はアルコール度数7%で、「焼酎1×ハイサワー3」の比率を用いた。しかし、味を決めるに当たっては議論になり、他社との差別化でアルコール度数を9%や12%にするというアイデアも出た。また、初めてのアルコール飲料だったことから、ラベルづくりに手間取り、完成に時間がかかったという。
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