ネットの広告ビジネスは消耗戦に入っている:“いま”が分かるビジネス塾(1/2 ページ)
動画広告は今後の伸びが期待できる分野である一方、広告単価は下落が続いているともいわれる。市場の注目は、単価の下落をPV数がカバーするという図式がいつまで続くのかという部分である。
米Googleの主力事業である広告事業は順調な伸びを示しており、2017年4〜6月期は前年同期比で約18.4%の増収、部門利益も12%の増益だった。しかし、4〜6月期の決算発表以後、持ち株会社であるAlphabetの株価は下落しており、市場は業績とは逆の反応を示している。このところ続いている株高への警戒感から多くの投資家が利益確定売りを行った要因が大きいものの、同社の先行きに対する警戒感が少しずつ増していることもまた事実である。
最近投資家が最も懸念を示しているのは、Googleのクリック単価(CPC)の下落である。よく知られているように、Googleの主な収益源は広告料金であり、ざっくりいうと、その広告収入は広告クリック数とクリック単価の積で決まる。同社が収益を拡大させるためには、広告のクリック単価を引き上げるか、クリック数の絶対値を増やすかの二者択一となる。
広告のクリック単価は基本的にはオークションで決まってくるので、同社が恣意的にコントロールすることは難しい。結局のところ多くのPV(ページビュー)を誘導し、その中で広告配分を最適化し、最も単価の高い入札を促していくという戦略になるわけだ。
実はここ数年、Googleは広告単価の下落に悩まされてきた。同社全体の広告単価は過去5年間で約半分に下落している。もし広告のクリック数が変わらなければ、同社の売上高も半額になってしまうが、それでも同社が成長を続けることができたのは、クリック数の絶対値が大幅に伸びたからである。
同社の業績は、広告単価の下落をクリック数の増加が補うことで増収を維持する図式であり、2017年4〜6月期はその傾向がさらに顕著となっている。クリック単価は前年同期比で23%の減少となり、ここ数年では最大の下落幅となった。一方、広告のクリック数は52%の増加と、これまでにない伸びを記録した。
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