ピンチの営業チームを救った「スラムダンク」:安西先生、数字が悪いです……
進捗が悪く、イヤーな雰囲気になっていたとある会社の営業部。悩めるチームメンバーを救ったのは……「スラムダンク」でした。
「うう、進捗(しんちょく)が悪い。今週の営業会議、ユーウツだな……」「営業部の雰囲気がよくない。部下を励ます言葉をかけているが、どうにも反応がよくない」――そんな悩みを抱いているビジネスパーソンは数多いのではないでしょうか。業績の進捗が悪ければ悪いほど、営業会議の空気も悪くなっていき、悩みも相談しづらくなり、改善が難しくなる……という悪循環に陥っているパターンもあることでしょう。
そんなつらい毎日を打破した方法を、とある会社の営業部で働くアラサーOL佐藤さん(仮名)から聞きました。部全体の成績が思わしくなく、毎日のように行われる会議と、コミュニケーションの名目で頻繁に行われる飲み会。当然のように話題のタネも尽きてきます。何もかも語り尽くした佐藤さんは、ふとしたきっかけでこんな話を出したといいます。
「そういえば最近スラダンのアニメがAbemaTVでやってて、ついつい見ちゃったんですよね。スラダンって今見てもめっちゃ面白くないですか?」
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた伝説のバスケットボールマンガ「SLAM DUNK(スラムダンク)」――通称「スラダン」。佐藤さんの発言をきっかけに、30〜40代が多いチームメンバーのスラダン愛が爆発しました。
「桜木が2万本シュート練習するところとかいいよね」「分かる」「俺はやっぱり安西先生のシーンが大好き」「何度読んでも泣ける」「えっ、てかこのチーム、みんなスラダン読んでるんですね!? 知らなかった」「これまでで一番好きなマンガだよ……」「スラダンの名せりふって、仕事にも使えそうだよね」「確かに!」
――その時はただ盛り上がって終わったスラダントークでしたが、翌日以降会議が変わってきました。スラダンというチーム全員に通じる「共通言語」があることで、会話の内容が変化したのです。
- (チームの数字がやばいときに)「それでも田中さんなら……田中さんならきっと何とかしてくれる……!!」
- 「伊藤さん、まじであと3営業日で目標値達成しないとやばいです」「オレは来週から点を取りに行くよ……」
- 「今月中にあと300万円決めないとやばいよ」「まだ慌てるような時間じゃないですよ部長……」「いや慌てる時間だよ……」
- (きついアポに挑む人に向けて)「あいつはいま沢北に1on1挑んでる」
- 「部長あれやりましょうよ、俺たちはってやつ」「俺たちは……強い!!!」
こう書くとふざけあっているようにも見えますが、苦戦していた佐藤さんのチームは調子がよくなり、今期の目標も達成が見えてきたといいます。なぜスラダンネタで語り合うだけなのに、チームワークが向上したのでしょうか?
「コミュニケーションが増え、お互いの現状把握ができ、チームの状況の共通認識が生まれました。仕事をしていると『自分がどういう状態か』は分かっても、チームとしての心持ちを共有するのは意外と難しい。でもそこで『俺たちはいま山王戦のラスト5分くらいだよ』というと、達成率のような数字以外で、現状をちゃんとツカんで心を1つにできますよね」(佐藤さん)
この「とある会社」、実は弊社アイティメディアのこと。現在は部内に「スラムダンク愛好会」を作り、スラダンのアニメやマンガを鑑賞したり名場面クイズをやったりしながら働いているそうです。
「マンガ」×ビジネス書
その話を聞いてから本屋に行ってみると、“スラダンに学ぶビジネス書”が数多く刊行されていることに気付きます。「『SLAM DUNK』に学ぶ癖のある部下の活用術」「スラムダンク勝利学」「スラムダンクから学ぶ人材育成術」「人を動かす! 安西先生の言葉」「人生で大切なことはすべてスラムダンクが教えてくれた」「桜木花道に学ぶ“超"非常識な成功のルール48」……チームワーク論や育成論など、内容は多岐にわたります。中には「論語」との共通点を挙げた「スラムダンク論語」といった本も。
他のマンガ作品でもありました。「『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方」「ジョジョの奇妙な冒険が教えてくれる最強の心理戦略」「キングダム 最強のチームと自分をつくる」……いずれも、個性豊かなキャラクター、印象的なせりふ、困難やピンチを乗り越えるストーリーを持つ作品です。
コミュニケーションを活性化し、お互いの現状把握と改善につながる「マンガ」。あなたの会社でも、「共通言語」になる作品があるかもしれません。
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