体臭ビジネスが盛り上がると日本人がおかしくなるのは本当か:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
臭いで周囲を不快にさせてしまう「スメルハラスメント」への関心が高まり、「体臭ビジネス」が盛り上がっている。しかし、「不快な臭い」が全て排除される環境には危険性もあるのではないか。なぜかというと……。
児童虐待相談件数が増えた時期
日本の児童虐待の相談件数は1996年度あたりから緩やかに上昇して、99年度に1万件を突破。以降ずっと右肩あがりで増え続けて、最新の2016年度の児童虐待相談対応件数は12万2578件(速報値)と過去最多となっている。この上昇の起点である1990年代後半というのがポイントだ。
98年、P&Gが「ファブリーズ」を世に出している。当時の日本には除菌消臭というジャンルはなく、瞬く間にこの新ジャンルは世に浸透していった。
その翌年には、資生堂と高砂香料工業が、中高年の体臭の原因物質「ノネナール」というものを突き詰めて、資生堂のマーケティング戦略として、そのニオイの概念を世の中へと普及させていく。そう、「加齢臭」である。
2017年の今も市場をけん引する「体臭消しビジネス」のトップスターたちが生まれ、世の中へ圧倒的なスピードで普及していくのとまるで足並みをそろえるように、児童虐待の相談件数が増えていく。
それはまるで、衣服についたニオイや体臭への過度な嫌悪感が日本人の「嗅覚」を狂わせ、それが生き物としても「異常」な行動に走らせているように見えないか。
なぜ日本の若者は性や恋に消極的なのか。なぜ日本の夫婦はセックスに積極的ではないのか。そして、子どもがこれだけ少なくなってきているというのに、なぜ親たちはわが子をいびり倒すのか。
これらの理由については、さまざまな専門家がさまざまな主張をしているが、少し見方を変えれば、われわれが「嗅覚を奪われたサル」になったことで「異常行動」をとっているようにも思えないだろうか。
ちなみに、なぜこのように1990年代末に「体臭ビジネス」が盛り上がったのかというと、90年代というのは「口臭ビジネス」が飽和状態になったからだ。
90年代前半、井森美幸さんの「お口くちゅくちゅモンダミン」というフレーズがCMで繰り返され、口臭ケアは現代人の新常識となった。95年になると、口臭チェッカーという「見える化」も行われ、排せつ物やおならが無臭になるという「エチケット・ビュー」というタブレットが品切れになるほど人気を博した。
もうお分かりだろう、「口臭消し市場」の次に、メーカー各社が新たな金脈として掘り当てたのが「体臭消し市場」だったのだ。
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