体臭ビジネスが盛り上がると日本人がおかしくなるのは本当か:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
臭いで周囲を不快にさせてしまう「スメルハラスメント」への関心が高まり、「体臭ビジネス」が盛り上がっている。しかし、「不快な臭い」が全て排除される環境には危険性もあるのではないか。なぜかというと……。
子どもにも広がる体臭ビジネス
最近流れているP&Gの「レノア」のCMでは、思春期くらいの少年たちがマツコ・デラックスさんに「出てるわ、出まくってるわ」と「女子に不人気な男脂臭」を指摘されている。「体臭ビジネス」はもはやオッサンだけではなく、子どもにまで広がってきているのだ。
10代や20代はとにかく必死に「男脂臭」を消し、社会人になったらいつエレベーターで女性たちに囲まれて「クサッ」と言われるかとビクビクしながら「ファブリーズ」や「リセッシュ」が手放せない。そして、ようやく汗臭さがおさまってきたかなと思ったら今度は「ミドル脂臭」、シニアになったら「加齢臭」がきついといわれる。
リタイアしたところで終わらない。老人特有の「老人臭」、さらにはオムツなどの「介護臭」をケアしなくてはいけない。また、孤独死でもして隣近所に「死臭」をまき散らしたら、家族や子どもにすさまじい迷惑が掛かってしまう。
大げさな話ではなく、「現代社会を生きる」ということは、「体が放つ臭いをどうやって消すか」ということとほぼ同じ意味となってしまっているのだ。
エチケットとかマナーということでは正しいのかもしれないが、生物としては明らかに「異常」な領域に突入している。
「体臭」を失ったことで、われわれは人間として大事な何かまで失ってしまっているのではないか。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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