大低迷にあえぐ東京ヤクルトスワローズは来季の新体制も大ピンチ:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)
球団ワースト記録のシーズン94敗を塗り替えるかどうかの瀬戸際に立つ東京ヤクルトスワローズ。来季に向けたチームの立て直しは、大きく難航しそうな気配が漂い始めている。
宮本氏のコーチ就任が有力も……
バタバタの内部昇格で指揮官就任を果たすことになる小川氏に、頼りになりそうな“右腕”の存在が急浮上している。来季のヘッドコーチ就任が濃厚となっている有力OBの宮本慎也氏だ。長年にわたってチーム生え抜きの主力として通算19年間ヤクルトを支え、3度の日本一を経験。アテネと北京五輪では全日本の主将も務め、キャプテンシーも抜群である。加えて宮本氏がヤクルト入りした背景には、当時スカウトを務めていた小川氏の存在もあり、両者の関係は「昵懇(じっこん)」と言っていい。選手兼任でコーチを務めたこともある宮本氏の古巣復帰となれば期待値も高まりそうだ。
だが意外や意外。チーム内に歓迎ムードはあまりないのが現状という。実際に来季からの宮本コーチ就任が内定したとの報道を耳にした一部の選手たちが顔をしかめたという話も耳にする。一体なぜ、こんなことになっているのか。チームの古参OBはこう打ち明ける。
「それもこれもやっぱり選手たちの気が緩んでいるから。宮本はとても気持ちが強く、妥協を許さないタイプ。ヘッドになれば容赦なくカミナリも落とすはず。仏の小川に変わって鬼になれる宮本ならば、タガが外れて勝利への意欲も失っている選手たちの腐った根性をたたき直せるからまさに適任だ。でも正式発表前から、ここまでアレルギーがあらわになるというのは、いかに今のチームのふ抜けぶりが重症であるかを物語っている。情けない限りとしか言いようがない。そういう状況だから宮本のゲキにも選手たちがシラけて付いてこないなんていうことも起こり得る」
さまざまな観点から見て小川監督と宮本ヘッドコーチの新体制には早々と難題が降りかかり、嵐の船出となりそうな気配が漂っている。フロントはしっかりとシミュレートできているのだろうか。いや、おそらく現在の危機的状況すら深刻には受け止めていないだろう。今の現場同様に球団や親会社のトップも悪しきファミリー体質のぬるま湯にどっぷりと漬かりきっているから、チームに新たな風を吹き込むような新指揮官の招聘(しょうへい)に動こうとせず、安直な内部昇格で問題解決を図ろうとする「何とかなるさ」の感覚のままなのである。
「そもそも今のオーナーもオーナー代行も、これまでは宮本の古巣復帰に反対の立場を明確にしていたと聞く。理由は宮本が解説者を務めるNHKの試合中継などのメディア上で、古巣ヤクルトの戦いぶりをメッタ斬りにしたことがあったから。ところがタイミングが悪いことに、その年の15年はチームが14年ぶりにリーグ優勝を果たした。そういう経緯もあって鼻高々になった2トップが宮本に対し、結果的に優勝した古巣の戦いぶりを何で批判するのかと激怒したというのがその流れ。でも宮本は元々、歯に衣着せぬ物言いをする男で、愛情があったから言ったまでのこと。
それでいて結局、本来は宮本嫌いだったはずの2トップも昨今の大低迷でバタつき始めると急に手のひらを返してしまった。安易に白羽の矢を立てた小川から『宮本をヘッドで復帰させてほしい』と頼まれると二つ返事でOKを出したらしい。一貫性がないというか、何と言うか……」(前出のOB)
ネット上では親会社のヤクルト本社に向け、「来季も低迷地獄にハマるならば、球団再建のためにもっとやる気のあるところへ身売りするべき」との手厳しい書き込みも目立つ。ここ数年、ずっと主力選手たちが負傷などで長期離脱を繰り返してばかりだが、この最大の懸案事項に関してもフロントや親会社はまったく手を付けようとしていない。チームの管理体制はもちろん、コンディション維持を図ることの出来ない選手自身の気の緩みに問題があることを看過し続けているのだろう。今のままではヤクルトはチームも球団も、そして親会社も「プロ」とは呼べない。全てをリセットしなければ、15年のリーグ優勝が「フロック」と見られるのがオチだろう。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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