藤田社長が「AbemaTV」に“ムキになる”理由:夏目の「経営者伝」(3/3 ページ)
サイバーエージェントの藤田晋社長は、なぜ「AbemaTV」を立ち上げたのか。何を目指しているのか。前回に続いて、藤田社長の経営哲学に迫っていく。
「過程」でなく「結果」が大事
楽観――。この言葉にこそ、彼の自信がみてとれる。藤田氏は“見極める目”を持ち、リスクとリターンを天びんにかけ、進んでいく。だから、こんな言葉も出てくる。
「よく、投資額が話題になりますが、ちゃんと会社としてリスクをとれる範囲内でやっています。僕は起業時、何の事業をやるか決めずに会社を立ち上げました。このエピソードを知っている若い人が『僕も取りあえず起業しました!』と言ってくることがあるのですが、ただの冒険野郎じゃいけない。最低限、自分や一緒に始めた仲間が食べていくくらいはできる、というワーストのプランはありました。もちろんこれは『AbemaTV』でも同じです」
ではズバリ「AbemaTV」は将来どうなるのか? 藤田氏はこんな話をする。
「これまでにないサービスだからこそ、まだ分からないというのが正直なところ。ただ、きちんとビジネスとして成り立つようにやり切るつもりです。そもそも新規性が高い事業は、どんなものでも“何となくいけそう”から始まると思うんです。もちろんそう思うまでには、徹底的に市場を知る必要はありますが、これまでも確実な勝算があってスタートした事業なんてほとんどありません。それよりむしろ、始めたからには何とかしなければいけない責任があるんですよ。だから、頑張るんです」
彼は、意外なことに手垢の付いた古くさい言葉を口にした。
「やっぱり『責任感』ってすごく大事だと思うんです。“三木谷曲線”ってご存じですか?」
楽天の創業社長・三木谷浩史氏の書籍にある言葉だ。
「簡単に言えば『99.5%まで仕事をする人は多くいるけど、最後の0.5%の粘りで結果に大きな差が出る』という話です。僕も実感しています。では、残りの0.5%をわけるのは何かと言えば、それは『責任感』なんです。だから僕は、今ムキになって『AbemaTV』をやってます。テレビ朝日さんなど、多くの方たちを巻き込んでいますから。そして、番組を楽しみにして下さっているユーザーもたくさんいますし。いまの僕は、このあらゆる責任を感じているんです」
では責任を感じ、あがける人間と、そうでない人間をわけるのは何か。藤田氏は簡潔に言い切った。
「『過程が大事』と思っている人でなく『結果が大事』と思っている人です。過程が大事と思っている人は、やっぱり、99.5%でやめちゃいますから……」
次回は、藤田氏の「マネジメント論」について聞く。
著者プロフィール
夏目人生法則
1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は『掟破りの成功法則』(PHP研究所)、『ニッポン「もの物語」』(講談社)など多数。
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