サイバーエージェント社長が実践する「強い組織」の作り方:夏目の「経営者伝」(2/3 ページ)
サイバーエージェント、藤田晋社長の経営哲学に迫る連載。最終回は「組織作り」「マネジメント」を中心にお伝えする。藤田社長が子会社の経営を若手社員に任せる理由とは?
メンタルアスリート――確かに、人間は誰もが「メンタルアスリート」としての側面を持っていて、自分をポジティブでいられるよう心を鍛え、制御し続ける必要があるのかもしれない。その三木谷氏のアドバイスは、藤田氏の組織作りにも生きていた。
「ポジティブな人を集めていれば、いい方向と悪い方向、どちらにも転んでもポジティブになりますよね。そうやって、組織がネガティブにならないような空気を作っています。社風がそうなっているからか、怒りという感情を表に出している人を見たことがないんですよね」
藤田氏本人がリアリストで、怒っても損しかないことを熟知しているのだ。だから、腹を立ててしかるべき場面でもワーッと感情を表に出す場面は少ない。
こうして挑戦しやすい環境をつくり、人材づくりの面でも生かす。
「ネット業界は新しく、そもそも経験者が少ない。でも、それを嘆いても仕方がない。だから『人材を育てたほうがいい』と考え、若い社員に新規事業をバンバンを任せています。自分もそうでしたが、年齢に関係なく、やらせてみればできなかったことができるようになるんです。その中から、収益性の高い事業も生まれ、業績にも貢献してくれる人が出てくる。もちろん、簡単に結果を出せない人もいるけど、トータルでみたらプラスになっていることが大事だと思うんです」
ポジティブな空気をつくり、任せきる。任せきったら、評価をする。
「社長になることで得られるものは大きいです。私が社長歴20年というキャリアで身に付けてきたことは社長をやらないと分からない。だから、どんどん子会社を作って、年齢に関係なく任せています。また、組織にJリーグのステージ制のような仕組みをつくり、営業利益や推定時価総額で子会社や事業をランク付けしています。新しい小さな事業でも「昇格」というステージを用意することで結果を出せばきちんと光があたる。口出しはしないけど、やったことはちゃんと私を含め多くが見ているよ、と」
任せるところは任せていく。だから藤田氏は『AbemaTV』に集中できる。
「経営者の中には『決算発表や株主総会の前は忙しい』と仰る方がいますが、その分野も任せられる人がいるので、私はそんなことはないんですよね」
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