24時間営業縮小から思う「地方創生」の真実:小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)
早朝深夜営業における人手不足などによって24時間営業の小売店や外食チェーンなどが減少している。そうした社会情勢と地方のつながりについて考えてみたい。
地方から企業が次々と流出
ただ、大きなダメージを受けつつも、地方自らが対策を講じることはほとんどできなかった。その理由は、地方経済に影響を与える製造業が、多くの場合、大都市圏に本社を構える大企業の工場を頂点としたピラミッドを構成しているためである。こうした大企業は地域のために企業活動を行っているわけではない。あえて正論を言うが、株主のためである。そして株主とは、資産家、外国人投資家、金融機関なのである。地方経済を主語として考える当事者はいないので、工場の採算が悪くなれば海外移転や閉鎖も辞さないのは自明である。こうした大都市の大企業を地域の経済政策の軸とせざるを得ない状況自体が、地方停滞の根源だと思う。
40年前の社会科の授業で、日本産業のけん引車は製造業であり、その中心的な立地は4大工業地帯(京浜、阪神、中京、北九州)だと教わった。その後、地方では工場誘致を進め、大企業の工場が4大工業地帯から移転して、各地域で大きな雇用を生み出した。
しかし、国際競争の時代を迎えると、製造業の生産拠点は海外へと移転し、雇用を創出したはずだった地方自治体の大企業工場誘致の政策は破たんし、製造業からの雇用シフト対応に苦しむことになった。
上の図表は第2次産業就労比率のピーク時期によって、都道府県をグルーピングしたものだ。4大工業地帯および瀬戸内工業地域は、主に1970年代には雇用の製造業依存がピークアウトし、その後、第3次産業へのシフトが50年以上の年月をかけて進んでいく。
一方、そのほかの地域では主に90年代以降、第2次産業就労比率のピークを迎えているのだが、その直後から、製造拠点が海外へとさらにシフトしたことで、多くの地方で第2次産業による雇用が急速に失われていくことになる。雇用を吸収したのはサービス業を中心とした第3次産業なのだが、地方では十分な規模のサービス業の生成がなされないまま雇用シフトが起こった。雇用シフトと簡単に言うが、日本の雇用環境の下、生身の人間が職を変えるのはかなりの痛みが伴い、地方の所得低下の一因になったのではないか。
こうしたことが、なぜここまで急に起きたのかと言えば、90年代以降に工業化した地域の多くが、大都市圏の大企業の工場を誘致することによって、雇用創出するという安易な手法を横並びで採用したことによるからだ。繰り返しになるが、地域に雇用をもたらしたとしても、大企業の出先工場を増やしても、経済環境が悪化すれば彼らは地域からいなくなってしまう。「地方創生」という言葉をよく聞くようになったが、地域に本社を置き、地域住民を雇用し、域外から収益を獲得してくる企業を育てなければ、こうしたことの繰り返しになるのは間違いないだろう。
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