フィンテック連携の“ハブ”を目指す三井住友FG:AIで不正を検知(3/3 ページ)
三井住友フィナンシャルグループが開発に力を入れるのがAIを活用したサービス。カード不正利用検知の精度を向上し、業務の効率化、高度化を図る。ITなどの異業種と連携して新サービスを生み出すためのハブとして機能していきたい考えだ。
門戸を広げて連携の“ハブ”に
ITイノベーション推進部は、三井住友FGの各社がベンチャー企業などと連携して新事業を開発するための“ハブ”機能を担っている。一方、この部署ができる前も、外部企業との連携や支援は必要に応じて実施していた。あえて「イノベーション」を掲げた部署を立ち上げたのはなぜか。それは「協業の門戸を広げるため」だという。
その背景にあるのはやはり危機感だ。フィンテックの分野で、米国などの海外企業が先手を打っていることについて、桑原氏は日本のサービスレベルが高水準だという事情を理由の1つに挙げる。
「日本ではATMからお金が出てこない、使えないということはほとんどなく、振り込みなどの業務も正確に行われる。金融インフラの面で、海外には新サービスが参入する素地があったが、日本では変革の必要に迫られていなかった」(桑原氏)
ところが、その状況は大きく変わった。スマートフォンを使った決済・送金サービスの普及など、キャッシュレス化が加速。世界的に大きな変革が進む。その波から取り残されないように、大手金融機関がさまざまな規模や業種の企業をつなぐ存在になって取り組む必要に迫られている。
とはいえ、海外の取り組みを後ろから追いかける、というわけではない。平手氏は、各国の状況に応じて浸透するサービスに違いがある、と指摘する。
「米国で伸びているサービスが日本でもそのまま広がるとは限らない。それぞれの国の事情に合ったサービスが受け入れられる」(平手氏)。例えば、日本でクラウドサービスを使った会計ソフトの需要が伸びているのは、企業における「業務の効率化」というニーズに対応しているからだ。利便性が求められている分野を見極めて投資していく必要がある。
情熱を共有する場を設置
9月に東京・渋谷に開設した新事業開発拠点「hoops link tokyo(フープス・リンク・トーキョー)」は、“ハブ”機能の象徴ともいえる場所。ベンチャーや大企業、自治体、大学など、さまざまな立場の人が集まる機能を持たせる。
ここでは、平日の夜を中心に、フィンテックやテクノロジーなどに関するイベントや勉強会、企業の新事業担当者による交流会などを開催。参加者による情報交換を促したり、有望なアイデアや技術を持つ人材を発掘したりする。
ここから新しい事業を生み出していくというが、「件数の目標は設定していない」(桑原氏)。まずは、気軽にアイデアを持ち込める“出会いの場”としての機能を確立していく。「顔を見て、膝を突き合わせて議論し、お互いの熱量を感じる。そんなリアルな場として、あえて拠点を設けた」(桑原氏)
AIやIoTなどの技術をうまく活用すれば、人の負担は減り、業務の効率化につながる。一方、そのような便利な新サービスを生み出すために、人と人のつながりは欠かせない。三井住友FGは、課題意識や情熱を共有できる連携から変革を生み出すことを期待している。
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