フィンテックで「異業種連携」が進む理由:変化を捉えるチャンス(1/4 ページ)
スマートフォンを使ったモバイル決済など、手軽に利用できるフィンテックのサービスが増えてきた。進歩のポイントとなるのが、金融をはじめとするさまざまな業界や規模の事業者による連携。多くの企業が参加するFintech協会に、日本のフィンテックの現状と今後について聞いた。
特集「メガバンク × フィンテック」:
金融ビジネスの最前線にあるFintech(フィンテック)。モバイル決済やAI(人工知能)を活用した資産運用などのサービス、仮想通貨など、日本でも取り組みが広がりつつある。国内金融業界で圧倒的な規模を誇るメガバンクも動き始めた。なかでも、ベンチャー企業や異業種企業と協業を探る、従来の金融ビジネスと一線を画す取り組みが注目を浴びる。メガバンクの取り組みから、金融サービスの将来像を探る。
「Fintech(フィンテック)」が身近になってきた。金融とテクノロジーを融合させた新しいサービスが次々と登場している。スマートフォンを使った決済サービスや、預貯金を管理するアプリなど、IT企業が提供する金融サービスを利用したことがある人も多いだろう。
フィンテックが注目され始めたのは2014年ごろ。08年のリーマンショック後の米国で、銀行への不信感が強まり、新しい金融サービスを生み出す動きが本格化したといわれている。その後、スマホの急速な普及なども、その流れを後押しした。
欧米などに比べて出遅れているといわれる日本でも、ベンチャー企業による家計簿・会計アプリや決済・送金サービス、クラウドファンディングなどのサービス投入が増えている。仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンや、人工知能(AI)などの最新テクノロジーを活用する動きも活発だ。4月には金融機関によるフィンテック関連企業への出資規制が緩和。大手金融機関も新事業創出に向けた取り組みを本格化しつつある。
このようなテクノロジーを使った金融サービスがますます進歩していくために、必要なものは何だろうか。金融機関や従来の金融サービス事業者だけでは生み出すことが難しい技術や知見がその1つだろう。ポイントとなるのは、さまざまな業界や規模の事業者による連携だ。
その連携を後押ししているのが、一般社団法人のFintech協会だ。フィンテックベンチャーを中心に15年に設立したばかりだが、すでにベンチャー企業97社、銀行などの大企業約200社が会員企業として名を連ねる。
フィンテックに挑む企業が連携する理由は何か。日本のフィンテックはどうなっていくのか。Fintech協会の代表理事を務める丸山弘毅氏(インフキュリオン・グループ代表取締役)に聞いた。
盛り上がりを見せる日本のフィンテック
――日本のフィンテックについては、欧米や中国などと比べて遅れているといわれてきましたが、ここ1〜2年で新たなサービスの投入が非常に活発になっています。その変化について、どのように見ていますか。
少し前までは、日本のフィンテック市場の位置付けは相当低く、不毛なマーケットと見られるほどでした。預貯金による貯蓄が多かったり、電子決済の利用率が低かったりという傾向があるからです。
しかし、1年ほど前から、フィンテックベンチャーによるサービスの増加に加え、大手金融機関の取り組みも本格的になり、プレイヤーが多くなってきました。さらに、国が積極的に数値目標を打ち出し始めました。「2027年にキャッシュレス決済比率を現在の2倍の40%に引き上げる」などといった具体的な目標が示されています。こうした盛り上がりによって、日本の取り組みも注目されるようになってきました。
関連記事
- 銀行なのに“面白さ”追求 じぶん銀行の狙いとは
じぶん銀行は、人工知能(AI)が為替相場の変動を予測するサービス「AI外貨予測」の提供を開始。外貨預金を始めるきっかけを提供する。客に親しみや関心を持ってもらうためのコンテンツの1つにする狙いもある。 - スマホで買って後払い「atone」 開発の狙いとは
後払い決済サービスのネットプロテクションズが、カードレス決済の新サービス「atone(アトネ)」の提供を始めた。開発の狙いや今後の展望などを柴田紳社長に聞いた。 - 加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。 - AIに投資を任せる時代 市場はどう変わる?
このところ人工知能(AI)技術を活用した資産運用サービスへの関心が高まっている。投資の世界にAIの技術が導入されれば、多くの人にとって恩恵がもたらされる可能性がある。一方で、資産運用の多くがAIで行われるようになった場合、市場の動きはどうなるのかという疑問も生まれてくる。今回は、AIによる資産運用に関する期待と課題について述べていく。 - 「おつり」でロボアドが投資 「投資初心者の一歩に」
個人金融資産の半分以上が預貯金で、投資意識が低い日本。「投資初心者が気軽に投資できる」サービスをウェルスナビが始める。「おつり」を活用し、ロボアドが自動で長期分散投資を行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.