フィンテックで「異業種連携」が進む理由:変化を捉えるチャンス(2/4 ページ)
スマートフォンを使ったモバイル決済など、手軽に利用できるフィンテックのサービスが増えてきた。進歩のポイントとなるのが、金融をはじめとするさまざまな業界や規模の事業者による連携。多くの企業が参加するFintech協会に、日本のフィンテックの現状と今後について聞いた。
――金融機関にとっては、既存のビジネスモデルを大きく変える可能性がある取り組みです。そのような企業も含めて、多くの事業者や政府が力を入れ始めた背景には何があるのでしょうか。
当初はフィンテックの広がりに対して、一過性のブームではないか、という懐疑的な見方もありました。その雰囲気が変わった背景には、ユーザーの変化が影響していると思います。
どのように変化してきたかというと、フィンテックのサービスを利用することに対して、ユーザーの抵抗がなくなってきた、ということです。無料通信アプリのLINEが提供するモバイル決済・送金サービス「LINE Pay」など、異業種からの参入や、先行している海外のサービスなどがすでに浸透しており、ユーザーもそれらを利用することに慣れてきています。
このように、金融サービスに対するユーザーの認識が大きく変化しているため、既存の枠組みを捉え直さないと対応できなくなっているのです。ユーザーが求めているのは、より便利なサービス。それを実現するためにテクノロジーを使おうとしているのです。
お金をためる目的を知る
――従来の枠組みを超えたビジネスモデルや便利なサービスを生み出すには、金融以外の幅広い知見や技術が必要です。メガバンクなどを中心に、「オープンイノベーション」を強化する取り組みが活発ですが、他社との連携という方法で得られるメリットは何でしょうか。
まず、ユーザーの日常行動に合ったサービスを提供しやすくなる、というメリットがあります。フィンテックサービスの利用シーンは日常生活です。買い物やビジネスなど、日常の行動に結び付く形でサービスを利用するので、関わるのは金融業界だけではありません。連携してデータ分析などをすれば、さらに質の高いサービスを提供できます。また、利用するサービスが増えたときに、1社ごとに登録する必要があると不便です。データを連携すれば、使いやすさの向上につながります。
――実際のサービスの事例は、どんなものがありますか。
成果はまだまだこれからだと思いますが、すでに形になっているサービスでは、自動貯金アプリが分かりやすいと思います。このサービスでは、連携する金融機関内に「仮想貯金箱」となる専用口座を設置し、普段使う口座と貯金専用口座を連動させて自動でお金をためていくことができます。「旅行」や「マイホーム」などの目的と目標金額、期間を登録して、好きなルールでお金を専用口座に移していきます。定額の積み立てだけではなく、カード決済時に「お釣り」とみなした金額を貯金するというルールにもできます。貯金箱にお金を入れるのと同じ感覚で簡単に使えます。
関連記事
- 銀行なのに“面白さ”追求 じぶん銀行の狙いとは
じぶん銀行は、人工知能(AI)が為替相場の変動を予測するサービス「AI外貨予測」の提供を開始。外貨預金を始めるきっかけを提供する。客に親しみや関心を持ってもらうためのコンテンツの1つにする狙いもある。 - スマホで買って後払い「atone」 開発の狙いとは
後払い決済サービスのネットプロテクションズが、カードレス決済の新サービス「atone(アトネ)」の提供を始めた。開発の狙いや今後の展望などを柴田紳社長に聞いた。 - 加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。 - AIに投資を任せる時代 市場はどう変わる?
このところ人工知能(AI)技術を活用した資産運用サービスへの関心が高まっている。投資の世界にAIの技術が導入されれば、多くの人にとって恩恵がもたらされる可能性がある。一方で、資産運用の多くがAIで行われるようになった場合、市場の動きはどうなるのかという疑問も生まれてくる。今回は、AIによる資産運用に関する期待と課題について述べていく。 - 「おつり」でロボアドが投資 「投資初心者の一歩に」
個人金融資産の半分以上が預貯金で、投資意識が低い日本。「投資初心者が気軽に投資できる」サービスをウェルスナビが始める。「おつり」を活用し、ロボアドが自動で長期分散投資を行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.