フィンテックで「異業種連携」が進む理由:変化を捉えるチャンス(3/4 ページ)
スマートフォンを使ったモバイル決済など、手軽に利用できるフィンテックのサービスが増えてきた。進歩のポイントとなるのが、金融をはじめとするさまざまな業界や規模の事業者による連携。多くの企業が参加するFintech協会に、日本のフィンテックの現状と今後について聞いた。
顧客との接点を見直すチャンス
――便利なサービスですが、金融機関にもメリットがあるのですか。
口座にお金を預けているだけでは見えなかった、お客さまの行動が分かるようになることです。旅行や住宅の購入、記念日の贈り物など、お金をためるのにもさまざまな目的や背景があります。それが分かれば、ユーザーの顔も見えてくる。普通預金の金額だけを参考に、投資などの関連商品の提案をしても、その人には合わないかもしれません。
アプリで貯金をしているだけなので、金融機関の他のサービスとは関係ないように見えますが、その裏側で個人に合ったサービスを提供できるように対応できます。さらに、例えば旅行資金をためている顧客にサービスを提供するために旅行関連企業と組むなど、新しい協業も考えられます。
ユーザーの日常行動が金融サービスに反映されるという意味では、割り勘アプリの事例もあります。割り勘は、金融サービスとは関係ない個人のお金のやりとりでしたが、計算したり、小銭を用意したりと煩雑さがあった。それをカード決済で済ます、というサービスにはニーズがあると思います。実際に生活の中でサービスを使う人の立場を考えると、これまでとは違う景色が見えてくるのです。
――顧客の行動やニーズを理解することが、なぜ今、課題になっているのでしょうか。その課題を解決するためには、フィンテックに注力することが必要なのですか。
従来のように来店による顧客との関係構築の機会が減り、店舗を持たない金融機関も増えています。金融機関にとって「顧客との接点をどう作るか」ということが大きな課題の1つになっているのです。
金融機関の収益に直接的な効果がないサービスでも、その金融機関のイメージを向上させたり、消費者のニーズを把握したりと、ブランディングやマーケティングの効果があると思います。顧客と密接な関係を築くにはどうしたらいいか。そのヒントを得る意味でも、フィンテックへの投資はチャンスにつながるのです。
変化していく顧客との関係を見直す、という以外にも、技術やノウハウを得るという意味でオープンイノベーションにはメリットがあります。グローバルでの競争に対応しやすくなるのです。海外では、GoogleやAmazon.comのように、大企業が膨大な量のデータを保有して、サービスの幅を広げています。そのような企業と競争していくのは、1社では厳しい。国内の同業他社よりもさらに強力な競合に対抗していくため、外部のノウハウを取り入れて、一緒にサービスを作っていく必要があるのです。
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