フィンテックで「異業種連携」が進む理由:変化を捉えるチャンス(4/4 ページ)
スマートフォンを使ったモバイル決済など、手軽に利用できるフィンテックのサービスが増えてきた。進歩のポイントとなるのが、金融をはじめとするさまざまな業界や規模の事業者による連携。多くの企業が参加するFintech協会に、日本のフィンテックの現状と今後について聞いた。
使う人の目線で考える
――そのような視点で、積極的に取り組む金融機関は増えているのですか。全く異なる業種や規模の企業と連携するのは、まだ難しい部分もありそうです。
金融機関の中でも、積極的なところとそうでないところと、まだ温度差はあるように感じます。リスクをしっかり管理して、事故ゼロを目指さなければいけない業種なので、ベンチャーとの協業に悩む部分もあるようです。また、新しい事業がすぐに収益に結び付くとは限らないので、経営判断も難しいと思います。
理解してもらうには、メリットを説明すると同時に、実際に使ってもらうことも重要だと感じています。担当者はサービスを利用していて便利さを実感していても、役員は全く使ったことがない、というケースはよくあります。地道ではありますが、スマホを触って、サービスを体感してもらう機会を増やしていきたいと考えています。
――さまざまな立場の事業者が、よりよいサービスの提供に向けて連携していくために、最も必要なことは何でしょうか。
やはり、ユーザー目線だと思います。先日、金融機関とベンチャーの役割を入れ替えて、それぞれの立場を体験するイベントを実施しました。金融機関に所属する参加者にビジネスプランを“逆提案”してもらう試みなのですが、非常に面白いアイデアがたくさん出てきました。私たちですら「そんなものはできないだろう」と言ってしまうくらいです。
それで分かったのは、立場が変わると目線も変わるということです。サービスを構築する側だと、現実的にできること、できないことに目を向けてしまいますが、ユーザーの立場から見ると「こんなサービスがあればいいな」「今の仕組みはここが不便」といった視点で考えられます。
外に出て、いろいろな人と話すこと。それが、コラボレーションによって便利な新サービスを生み出すための最初の一歩になると思います。
顧客との関係を見つめ直し、サービスを利用する人の目線で考える。最新テクノロジーを活用して新しいサービスを生み出すフィンテックが、そのきっかけになるかもしれない。そうなれば、キャッシュレスだけにとどまらない、驚くようなサービスを利用できるようになるかもしれない。次回から、異業種企業との連携に力を入れるメガバンクの取り組みを紹介していく。
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