AIに投資を任せる時代 市場はどう変わる?:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
このところ人工知能(AI)技術を活用した資産運用サービスへの関心が高まっている。投資の世界にAIの技術が導入されれば、多くの人にとって恩恵がもたらされる可能性がある。一方で、資産運用の多くがAIで行われるようになった場合、市場の動きはどうなるのかという疑問も生まれてくる。今回は、AIによる資産運用に関する期待と課題について述べていく。
投資を全てAIにお任せ
ここ数年、AIに関する技術が急速に進歩してきたことで、あらゆる分野においてAI化の試みが行われている。資産運用の世界も例外ではなく、巨額の資産を運用する大手ヘッジファンドではトレーディングのAI化が急ピッチで進んでいるといわれる。
プロの世界においてAIの導入が進めば、当然、一般投資家向けのサービスにもAIの技術が導入されてくる。最近ではスマホをベースに、ごく簡単な質問に答えるだけで最適なポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を構築し、実際にそのポートフォリオに従って運用を行ってくれるサービスも登場している。
例えば、ウェルスナビという会社はポートフォリオの構築や実際の運用をロボットにお任せできるサービス「WealthNavi」を展開している。ETF(上場投資信託)を中心に最低100万円から運用でき、運用方針については年齢、年収、資産額、投資目的など簡単な質問に答えるだけで自動的に決定される。あとは資金を振り込むだけで、自動的に買い付けがスタートする。
資産運用はポートフォリオを構築して商品を買い付けるだけでは不十分である。市場の動きに合わせてポートフォリオの内容を随時、更新していかなければならない。これを資産運用の世界では「リバランス」と呼んでいるが、ウェルスナビではこのリバランスについても完全自動化している。一度、資金を振り込んでしまえば、後は完全にほったらかしで良いのだ。
手数料は資産残高が3000万円までは資産額の1%、3000万円を超える分については0.5%が毎年徴収されるが、買い付けや売却などの手数料は発生しない。購入するETFには当然手数料がかかっているが、こちらは運用金額の中から間接的に控除されてしまうので、同社の手数料とは別の扱いになる。
こうしたAIを活用した投資サービスは加速しており、楽天証券やマネックスといったネット証券会社、みずほ銀行などの既存金融機関もロボット運用サービスを提供している。
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