2017年、日本の株式市場はこう動く:“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)
2017年における日本の株式市場はどう推移するのだろうか。期待と不安が入り交じる難しい市場環境ではあるが、これまでのトランプ氏の主張から、ある程度までなら市場の動きを予測することはできる。
好むと好まざるとに関わらず、2017年の株式市場はトランプ経済に振り回されることになるだろう。今のところ期待先行の相場展開が続いているが、実際にどのような経済運営が行われるのかは、政権がスタートしてみないと分からない。
期待と不安が入り交じる、なかなか難しい市場環境ではあるが、これまでのトランプ氏の主張から、ある程度までなら市場の動きを予測することは可能だ。まずはマクロ的な視点でトランプ経済がどう推移するのか考え、そこから主要な業界の影響を分析していくのが良いだろう。
ドル高を引き起こす可能性が高い経済政策
トランプ経済のカギを握るのは、何といっても巨額のインフラ投資である。トランプ氏は、総額で1兆ドル(約114兆円、民間資金含む)のインフラ投資を主張しており、世界の株式市場はこの数字に大きく反応している。投資の期間は10年と言われているので、1年当たりの金額としては1000億ドルということになる。
日本人の感覚からすると大きな金額に思えるが、米国経済の現状を考えると実はそうでもない。米国のGDPは既に18兆ドルと日本の4倍近くもあり、インフラ投資が直接的にもたらす効果はGDPの0.6%程度に過ぎない。ただ、この規模の投資が継続的、かつ重点的に実施されれば、米国の産業インフラはかなり強化されることになる。
労働者の所得が増えるなど消費にも好影響を与えることを考えれば、トランプ氏が掲げるインフラ投資については、取りあえず、ポジティブに評価して良いだろう。
もう1つの柱となっているのが「大規模減税」である。トランプ氏は法人税率を35%から15%に一気に引き下げるとしており、もしこれが実現すれば、米国は先進国の中でも突出して税金の安い国となる。増税による景気抑制の懸念がなくなるので、やはり景気にはプラスの影響を与える。
一連の経済政策は為替市場においてドル高を引き起こす可能性が高い。減税が実施されるということは、インフラ投資の財源として国債が充当されることを意味している。これは金利の上昇要因であり、これがさらなるドル高をもたらすことになるだろう。また、法人税が大幅に減税となれば、米国への資金還流が活発になり、この動きもドル高を押し進める。
財務長官就任が予定されているスティーブン・ムニューチン氏は具体的な為替水準への言及は避けているが、少なくとも現時点においてドル高は否定していない。このため為替市場ではドル高が続き、債券市場では金利が上昇している。
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