2017年、日本の株式市場はこう動く:“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
2017年における日本の株式市場はどう推移するのだろうか。期待と不安が入り交じる難しい市場環境ではあるが、これまでのトランプ氏の主張から、ある程度までなら市場の動きを予測することはできる。
2017年における日本の株式市場はどう推移する?
整理すると、米国の景気は拡大し、金利は上昇、為替はドル高傾向ということになるが、当然のことながら、このシナリオにはリスクもある。
最大の懸念材料は保護貿易主義である。トランプ氏は米国のエアコンメーカーであるCarrier(キャリア)に対してメキシコへの工場移転を中止するよう要請し、同社はこれを受け入れた。現実にはわずか1000人分の雇用であり、単なるパフォーマンスに過ぎないという見方が大半を占める。だが、こうした事例が続くようなら、トランプ政権に対する警戒感が一気に高まる可能性もあるので注意が必要だ。もしそうなった場合には、期待値が大きかっただけに、株価の下落など反動も大きくなるだろう。
ここまでがトランプ時代における米国経済の基本的な見立てである。日本の輸出産業は米国市場に大きく依存しており、日本経済は米国経済の影響を受けやすい構造になっている。最近は製造業も輸出から現地生産にシフトしているが、基本的な経済の仕組みはあまり変わっていないと思った方がよい。日本の市場動向を考える際には、まずこの点についてしっかり認識しておく必要がある。
では、2017年における日本の株式市場はどう推移するのだろうか。現在の株式市場は、日米両国ともトランプ氏に対する期待相場という状況が続いている。もしこの期待が縮小することなく、インフラ投資や減税が相次いで実施されることになれば、両国の株式市場は引き続き堅調に推移するだろう。
日本の輸出産業にとっては、円安と米国市場の拡大という2つの恩恵があり、業績の伸びが期待できる。2017年3月の決算は、円高で業績が低迷する企業が多くなるはずだが、株式市場は常にその先の決算を先取りするものである。そうだとすれば、株価は決算に関係なく順調に上がっていくことになる。
ただし、業種の選別については少し注意が必要もしれない。輸出産業ということになるとまずは自動車産業や重電といった分野が思い浮かぶのだが、これらの業界はマクロ的な要因とは別に逆風も吹いているからだ。
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