「バカ売れ」誕生を予感させる“熱”とは:『バカ売れ法則大全』発売(3/3 ページ)
「バカ売れ」商品を生み出すには何が必要なのか。コピーライターの川上徹也氏によると、商品を売りたい、良さを伝えたい、という「熱」だという。どういうことか。ヒット商品の事例からポイントを聞いた。
ニーズの変化を捉えたヒットも
しかし、常識を超えたアイデアばかりがヒットにつながるわけではない。マーケットインの方法で、しっかりと消費者のニーズをとらえたヒット商品も数多くある。
その一例が、コクヨが「キャンパスノート」シリーズに新しく投入した「スマートキャンパス」だ。キャンパスノートといえば、学生らに長年愛用されてきた定番商品。すでにイメージが固まっている商品であっても、少し手を加えると新しいモノになる。それを象徴するようなヒット商品だ。
スマートキャンパスは、従来よりも紙を薄くして、ノート全体を軽くした商品。なぜノートを軽くする必要があるかというと、教科書が重くなっているからだ。最近の教科書は、学力強化の傾向に加え、カラーページや写真が増えていることからページ数が増加。参考書や資料を持ち歩く必要もあり、カバンはどんどん重くなっていく。せめてノートだけでも軽くならないか、というニーズがあった。
「ページ数も減らさず、裏写りせず、書き心地も滑らか。その条件を満たすように開発し、軽量スリム化に成功しました。市場のニーズに技術力で応えた好例です」
誰もが驚くような新しいアイデアではなくても、既存商品の形や大きさを変える工夫でニーズに応え、市場を少しずつ広げる方法もある。
『バカ売れ法則大全』でも取り上げているローソンの焼きとりの例もそうだ。長年、売れずに苦戦してきたが、大きさと重さを強調する「でか焼き鳥」が大ヒットした。また、ソニーは小型のポータブルプロジェクターを開発。投影に必要な距離を短くして、狭い部屋でも壁にきれいな映像を映せるようにした。家庭でも手軽に使えることから、品切れが続出するヒットになった。
新しい価値を生み出し、伝わるように工夫する。そのような取り組みを着実に実行していくための原動力こそが「熱」なのだろう。川上氏はこのように語る。
「まずは熱を持って商品を生み出し、それを売ろうとすることです。どんなに優れたマーケティング戦略やキャッチコピーを駆使しようと、作り手や売り手に熱がなければ大ヒットすることはまずありません。一方、熱だけでは空回りする可能性も高い。熱を持ちつつクールな頭で、どうすればより売れるようになるかを考えて、商品の改良を重ねたり、売り方を工夫したりすることが重要ではないでしょうか」
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