沿線女子が企画、カーペット敷き「汽車カフェ」で女子会しよう:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
「このままでは廃止されてしまうかも」。ローカル線を活性化するために、沿線の女子が立ち上がった。11月18日に催行予定の「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」は地元の女性ならではの企画。地域が鉄道と関わるという意味でも重要なイベントだ。
普段はロングシート(長椅子)のディーゼルカー。しかし、乗ってみたら驚いた。床はふわふわのカーペット、シートにはソファカバーが掛けられて、小さなテーブルにお菓子が盛られている。靴を脱いで上がり込む。くつろぎカフェのイメージというけれど、女の子の部屋に遊びに来たような、いや、女子会にゲストで呼ばれて困惑するオジサン。それが私だ。こんな列車が走るのか。今までになかった感性に驚く。
ここはJR西日本の木次線だ。11月18日に日本旅行が開催するツアー「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」の運行テストにお邪魔した。テスト日の8月25日の車窓は深緑だったけれど、開催時は紅葉が始まるだろう。この日はクーラーで涼しいけれど、開催当日はヒーターでぬくぬくできるはず。企画は沿線に勤務する20代の女性たち。「おくいずも女子旅つくる!委員会」だ。普段は観光や地域活性化の仕事に取り組んでいる。所属も役所や地元メディアなどさまざまだという。
彼女たちが企画したツアーのテーマは「汽車カフェ」プラス「非日常体験」だ。行程を紹介しよう。
午前10時50分。木次線の起点、山陰本線の宍道駅に集合する。朝寝坊さんの女子でも米子や松江から間に合う時刻。宍道駅はJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」運行に合わせてリニューアルし、とてもきれいな空間になった。女子旅の出発にふさわしい駅だ。
午前11時18分。宍道発の木次線の列車に乗車。通常運行の車両に「女子旅車両」を連結する。カーペット敷きの車内でくつろぐ。沿線の素材を使ったスイーツと温かいコーヒーを楽しむ。1時間30分。車両にトイレもついているから安心だ。
午後0時48分。出雲横田駅に到着。駅付近、線路際の安楽寺で地元食材を使ったお弁当をいただく。その後、自由行動で横田の街を散策。駅前にはそろばんの全国シェア第7位という雲州そろばんの記念館がある。刀剣女子なら「奥出雲たたらと刀剣館」は車で5分。友達とタクシーに相乗りして行ってみよう。あるいは安楽寺に残って、木魚をたたく読経体験や扇子づくりもできる。良い記念になりそうだ。
午後3時30分。出雲横田駅に再集合。
午後3時48分。再び汽車カフェに乗車。お菓子とコーヒーで旅の余韻に浸る。座席、いや、超ロングソファ(笑)で昼寝もできる。
午後4時42分。木次駅に到着。解散。米子、松江、出雲市方面に戻るなら午後5時発の宍道行き列車に乗り継げる。土曜日だから、付近に宿泊して日曜日にヤマタノオロチ由来の観光を楽しむもよし。
料金はカフェ列車、昼食、菓子、安楽寺の体験メニュー込みで8800円。女子のお財布事情から考えれば、ちょっと考えてしまいそう。これは乗車人数が25人に限定されているためだろう。参加人数を増やせば「動くカフェでゆったりと過ごす」は難しい。非日常体験を楽しむ感じ、体験してみたらこの価値は分かってもらえそう。「インスタ映え」する写真もたくさん撮れる。
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