沿線女子が企画、カーペット敷き「汽車カフェ」で女子会しよう:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
「このままでは廃止されてしまうかも」。ローカル線を活性化するために、沿線の女子が立ち上がった。11月18日に催行予定の「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」は地元の女性ならではの企画。地域が鉄道と関わるという意味でも重要なイベントだ。
来春から路線別輸送成績で最下位に
木次線は島根県松江市、宍道湖の湖畔の宍道駅と、中国山地の奥、広島県庄原市西城町にある備後落合駅を結ぶローカル線だ。2016年度の路線別平均通過人員(全区間の1日当たりの利用者数を1キロ単位で平均した輸送量)は204人。これは輸送実績、つまりどれだけの利用者がいるかという指標で、木次線は下から数えて2番目。ちなみに最下位は83人の三江線で、18年3月末の廃止が決まっている。
つまり、18年4月から木次線はJR西日本の輸送実績で最下位の路線になる。かつてJR西日本は社長の談話で「山間部の鉄道路線はバスなど他の交通手段に切り替えたい」という意向を示しており、その通りに三江線は廃止となる。運行実績の下から順番に足切りされるとなれば、次の標的は木次線だ。
この動きに危機感を持った沿線自治体の雲南市と奥出雲町は、16年の木次線開通100年、17年の木次線全通80年をきっかけに、利用活性化に取り組んでいる。木次線では春から秋まで、トロッコ列車「奥出雲おろち号」を運行しており、乗車率は悪くない。この列車が沿線に観光客を集める役割を果たしているけれど、車両の老朽化が課題となっている。
「奥出雲おろち号」は、雲南市、奥出雲町などが参加する広域連合「出雲の國・斐伊川サミット」が支援しており、次の観光列車、観光車両を模索する動きがある。16年は沿線のワイナリー「奥出雲葡萄園」と「木次乳業」の協力で「木次線ワイン&チーズトレイン」を開催した。奥出雲おろち号に乗車し、車内でワインの試飲、下車観光でワイナリー見学とチーズづくりを体験できるという企画だった。(関連記事:世界に通じる観光列車へ! 「木次線ワイン&チーズトレイン」から始まる未来)
しかし、紅葉も見頃という絶好の時期だったにもかかわらず、集客は奮わなかった。主な理由は告知不足だ。発表から募集締め切りまでの期間が短く、日帰りにしては料金が高いという声もあった。しかし参加者からは好評だった。つまり、告知の段階で魅力を伝えきれなかったといえる。
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