沿線女子が企画、カーペット敷き「汽車カフェ」で女子会しよう:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
「このままでは廃止されてしまうかも」。ローカル線を活性化するために、沿線の女子が立ち上がった。11月18日に催行予定の「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」は地元の女性ならではの企画。地域が鉄道と関わるという意味でも重要なイベントだ。
鉄道路線廃止の原因は「地域の無関心」
「癒やしの汽車旅 木次線 おくいずも女子旅列車」に話を戻すと、発案が地元の女子有志である。これは木次線にとってとても重要だ。地方ローカル線が廃止になる理由は、赤字だけではない。地域が無関心になること。価値の低下である。普段クルマを利用する人は鉄道に関心を持たない。鉄道に関心を持たない人は、鉄道利用者の気持ちを理解できない。鉄道なんてなくてもいい。こういう意識が広がっていくと鉄道路線は廃止される。
簡易スタイルの観光列車でも、走り始めれば他の地域から乗客が訪れる。観光客は地域で買い物をし、飲食し、居心地が良ければ宿泊滞在につながる。地域に利益が配分される。商店、飲食店、宿泊業の関係者は鉄道に乗らないかもしれない。しかし「乗らなくても、鉄道に関わればメリットがある」という意識が高まると、鉄道への関心は高まっていく。地域の鉄道への関心が高まれば、鉄道事業者も簡単には廃止できない。
鉄道路線の廃止の理由は、お金よりも「地域の無関心」だ、その意味で、普段はおそらくクルマで通勤する女子たちが観光列車を立案したことはとても重要だ。鉄道を楽しいと思ってもらうこと。それが口コミで伝わること。いままで鉄道に乗らなかった人々が鉄道を楽しむこと。他の地域へ発信すること。全ての歯車が回り始める。
地域の人々の鉄道への関心が高まれば、鉄道事業者や自治体にとっても鉄道路線の価値が高まる。せっかく作ったインフラを取り壊す前に、その価値を見直す。観光列車にはその役割がある。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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