島原鉄道の事業再生支援が決定 地域再生の総力戦が始まる:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
地域経済活性化支援機構は、長崎県の島原鉄道に対する事業再生支援を決定した。今後、島原鉄道は同郷の長崎自動車をスポンサーとして迎え、地域交通、観光事業を担っていく。関わる人々が「島原半島には鉄道が必要」と判断した結果だ。
長崎バスの傘下で再生
地域経済活性化支援機構は、政府が100億円、民間金融機関130社が100億円を出資する株式会社だ。社会的価値のある事業を担いながらも債務に苦しむ企業を救済するための官民ファンドで、株式会社地域経済活性化支援機構法に基づいて活動する。鉄道分野では大井川鐵道の再生事業が記憶に新しい(関連記事:なぜ大井川鐵道の経営再建に北海道のホテル会社が?)。
長崎新聞によると、島原鉄道の累積損失は7億5000万円に上ったという。地域の交通手段を担う責任、いままでの官民の支援を得た経緯を考えても、破産し業務撤退という選択はできなかった。そこで主要取引銀行の十八銀行、親和銀行と協議し、地域経済活性化支援機構の支援を検討。長崎自動車をスポンサーに選んで正式な支援申し込みとなった。大井川鐵道の支援は地縁も血縁もない北海道のホテル経営企業がスポンサーとなった。島原鉄道は地元で、なおかつ同じ交通事業者がスポンサーとなる。気持ちが通じる相手の盃を受ける形といえそうだ。
長崎自動車は長崎バスの愛称で親しまれている会社だ。本社は長崎市。昭和初期に長崎市内の民間バス事業者を統合して発足した。創業者は雲仙で乗合自動車を営業していたと言うから、島原鉄道と浅からぬ縁があったかもしれない。公式サイトによると、現在は長崎市内をはじめ長崎半島の全域に路線網を持っている。保有バス台数は585両。資本金7億8000万円。
有価証券報告書によると、16年12月の決算で売上高約98億円、経常利益約6億円、総資産額約232億円。1株あたり50円の配当を維持している。連結ベースでは売上高約175億円、経常利益11億円、総資産額は276億円。人口約42万人の長崎市の生活を支える交通網と、長崎という強力な観光資源のもと、安定した経営基盤を築いている。
そういえば、創業80周年記念のCMに、俳優の役所広司さんを主役としたバス運転手を登場させて話題となっていた。このCMは16年の日本最大級の広告賞、ACC CM FESTIVALでACCゴールド賞を受賞している。長崎の人々にとって親しみのあるブランドであろうし、長崎在住ではない人も、公式サイトを見れば同社の社会的貢献度は理解できる。転職サイトに寄せられた従業員の声も好感度が高い。安心して鉄道路線を任せられそうだ。
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