気鋭のIoTベンチャー「ソラコム」 玉川社長が語る急成長の理由:創業2年半でKDDI傘下入り(3/4 ページ)
17年8月、KDDIが創業わずか3年のベンチャー企業・ソラコムを200億円で買収するというニュースがビジネス界をにぎわせた。ソラコムはIoTデバイス専用のSIMカードを手掛けており、3年間で約8000ユーザーまで顧客数を拡大している。なぜ、これほどのハイスピードで成長できるのだろうか。玉川憲社長に話を聞いた。
眠れぬ夜に企業を決意
玉川社長はソラコムの創業以前、アマゾン データ サービス ジャパンに在籍し、日本でのAmazon Web Services(AWS)クラウド事業の立ち上げを主導した実績を持つ“クラウドのスペシャリスト”だ。
現在のビジネスのアイデアは、前職でともにAWSクラウド事業に携わり、のちにソラコムの共同創業者となる安川健太氏(現ソラコムCTO)との何気ない会話から生まれたという。
「14年春、安川と一緒に米国・シアトルにある米Amazon本社に出張する機会があった。仕事を終えてホテルで飲んでいると、『世間一般では、クラウドは小さなアプリケーションしか動かせないと考えられているが、自分たちならもっと大きなシステムを動かせる』という話になった。その一例として挙がったのが、モバイル通信の基幹システムだ」
「その夜は時差ぼけで眠れなかったので、『クラウド上での通信システムの構築に成功した』という架空のプレスリリースを一気に書き上げてから寝た。翌朝に冷静な頭で読み返したが、実現可能だとあらためて感じ、創業を決意した」
キャリアに自ら売り込み、傘下入りを実現
こうした経緯で創業したソラコムは、その後破竹の勢いで成長。手応えを得た玉川社長は、大手キャリアにソラコムのIoT通信サービスを売り込み、さらに事業を発展させたいと考えた。
「キャリアは通信用のハードウェアに膨大な資金を投資している。当社が持つクラウドベースの通信方式を活用すれば劇的にコストを削減できるため、先方にもメリットがあると考え、16年7月ごろから3社に提案を始めた」
現在の親会社であるKDDIと最初に接点を持ったのも、営業活動での提案の場だったという。
「3社の中で、当社の通信システムに最も興味を示したのがKDDIだった。まずは協業することが決まり、ソラコムはau端末向けIoT通信サービス『KDDI IoTコネクトAir』(16年12月リリース)の構築をサポートした」
「その後も良好な関係が継続し、あるミーティングで『海外展開に向けてさらなる資金が必要だ』と話した際、KDDI側から『それならグループに入らないか』と誘われた。NTTドコモ回線を使っている点に関しても『問題はない』とのことだったため、傘下入りを決めた」
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