丸井がクレジットカードの即時発行にこだわる歴史的な理由:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(4/6 ページ)
会員を600万人以上持つ丸井グループのクレジットカード。その多くが若者であることは今も昔も変わっていない。なぜ丸井は彼らに支持されるのか。その理由をひもとくと……。
店舗を持っている意義
大薗: 若者以外のセグメントに向けて、今後何か取り組んでいくのでしょうか?
青井: これまで海外に居住している人にカード発行はできませんでした。例えば、留学生は優秀で、意欲があって日本の学校に来ているのに、住所が海外なので信用供与できないといいます。それはおかしいので、新しいスキームを作って、彼らにもカードを発行しようと考えています。
もう少し広げると、決済、分割、リボ、お貸し出しはクレジットカードでできていましたが、金融サービスはそれだけではありません。貯める、増やす、備える、やりくりするなど、いろいろな領域があります。オープンイノベーションによってそうした領域でのサービスを広げていきたいです。将来的には店舗を使って、ファイナンシャルアドバイザーによるサービス提供も検討していきたいです。
大薗: 店舗を使うというのが興味深いです。アドバイザーであればオンラインでサービス提供することで低コスト化も可能だと思うのですが、店舗にこだわる理由は?
青井: 今、店舗というリアルからインターネットにシフトしていく流れがありますが、ネットの領域で先進的なところほど、すべてネットで完結しようとすると、消費者から見た時に不都合な点があるのです。それよりも、ネットとリアルと最適に融合させる「オムニチャネル」が、実はより利便性、満足度が高くなるのではと思っています。
米国でメガネのEコマースを行うWarby Parker(ワービーパーカー)は、元々オンラインで成長してきましたが、今は全米各地にリアルストアを作っていて、坪当たりの販売額が、アップルストア、ティファニーに次ぐ米国3位という大繁盛店になっているのです。店舗では試着したり、商品の説明を聞いたりするだけで、注文はスマホで行うのですが、物理的なものを手に取ってみたり、何か聞きたいことがあればスタッフにすぐコミュニケーションを取ったりできるのはリアルの方が優れているのです。
金融も同じだと思います。口座開設するとき、犯罪収益移転防止法の観点で本人確認が必要です。すべてオンラインだと、その情報に基づき、確認した住所に一度書類を郵送しないといけません。そして、申し込み者が確かにその場所に居住していることを確認しないと、次の契約のステップに進めないのです。
証券関連だと、次にマイナンバーを提出します。そうすると、オンラインなのに郵便で2回、3回とやり取りしないといけないのです。実はそこで申し込み者はかなり脱落します。コストもかかるし時間もかかります。
オンラインでプロセスが簡単に流れているわけではありません。一方、丸井の店舗だとクレジットカードを申し込む際、免許証などを拝見して、その情報を電子入力するわけですが、本人確認に関しては免許証の写真と目の前の申し込み者の顔が間違いなく同じであれば、書類を郵送しなくていいのです。
また、郵送でクレジットカードを届けるのが通常のカード会社のオペレーションですが、丸井は店舗で申し込んでから20分後にカードを渡せます。これはオンライン申し込みよりもはるかに早いのです。ネットが進めば進むほど、ネットで完結するものとリアルが対立するのではなく、ネットとリアルがうまく協業するデザインや流れを作るのがとても重要です。消費者にとって何が最も便利なのかという点にこだわっていきたいです。
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