丸井がクレジットカードの即時発行にこだわる歴史的な理由:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(5/6 ページ)
会員を600万人以上持つ丸井グループのクレジットカード。その多くが若者であることは今も昔も変わっていない。なぜ丸井は彼らに支持されるのか。その理由をひもとくと……。
20分でクレジットカードを発行できる理由
大薗: どうして丸井は20分でクレジットカードを発行できるのですか?
青井: 根性ですね(笑)。われわれが絶対にやらなければならないことだという本質的な要件です。通常のクレジットカードだと、何もその場で出す必要はないのです。ゆっくりとフォームに入力して、審査して、その結果を基に郵送してというのが標準のプロセス。クレジットカードはそういうものだという常識が消費者の中にもあるはずです。
一方、丸井はハウスカードのときから店頭で即時発行してきました。VISAと直接契約したときに、それはできないと言われたのですが、これだけは絶対継続したい、どうやったら許可してくれるのかと交渉を重ねました。最終的にVISAもそこまで言うのであればと前向きの妥協をしてくれました。これまでそんなことを言い出す会社はほかにありませんでしたが、当社は月賦販売がビジネスの発祥なので、ここはどうしても譲れませんでした。これが根性たるゆえんです。
大薗: システム投資など技術サイドでの取り組みもあるのでは?
青井: はい、そこも重要です。66年にIBMのシステムを導入して以来、システムと商売は一体化していました。テクノロジーがないとクレジットカードは動きませんから。
さらに、世の中にないシステムを作らないと、われわれがやりたいことはできません。外部に発注しようにも、標準的なシステムはありませんし、概念や必要性も理解してもらえません。だったら内部で作っていくしかないとなったのです。
80年代にアウトソーシングが流行したときは、投資家から何でそんな無駄なことするのだと責められました。それ以来、ずっと言われ続けていたのですが、リーマンショック後くらいから状況が一変したのです。システムをアウトソーシングしていた会社が次々とトラブルを抱え、多額の評価損を計上したり、5年も10年もやっているのに未だにシステムが完成しないという事案が起きたりしました。すると、投資家の評価が変わり「御社はインハウスでやっていて素晴らしいですね」となったのです(笑)。
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