ダイドー「デミタス」 甘すぎない微糖を実現した“変えない価値”:「甘さ控えた微糖」とは?(4/4 ページ)
ロングセラーの缶コーヒー「ダイドーブレンド デミタス」。その商品戦略を支えているのが、ダイドードリンコの土屋淳一さんだ。新商品「甘さ控えた微糖」の開発背景から、伝統を守り伝える土屋さんの仕事術を探る。
変えてはいけない“資産”
新商品開発の現場で、土屋さんはブランド全体の戦略を練る立場だ。市場調査や中身の開発、宣伝など各チームをまとめながら、完成に近づけていくことが求められる。そのために必要なのは、ブランドへの深い理解とバランスの取れた視野だ。
「開発の途中には、単品として『おいしい』試作品ができることもあります。しかし、それが良いとは限らないのです」と土屋さんは話す。どういうことだろうか。
重要なのは、そのコーヒーがデミタスシリーズの商品群に加わるということだ。デミタスシリーズの特徴は、濃厚でまろやかな味であり、香料に頼らずにブレンドで個性を表現することでもある。時代の流れや嗜好(しこう)の変化には対応する必要があるものの、“資産”となる部分は変わらない。「お客さんが期待する味から離れてしまうと、リピートしてもらえなくなります。期待してもらえる部分を変えてはいけません」
かつて、中身開発の担当も経験した土屋さんには、開発担当者の気持ちも理解できる。「変えずに守っていく部分はみんな理解していますが、思いもよらない味ができると『これもありなのでは』と思ってしまいます。今回の場合、苦みの強い味などです。そういったものは別の商品に応用することにして、デミタスシリーズとしての方向性を軌道修正する必要があります」
デミタスシリーズの良さを引き継ぎながら、その時代に求められるものにしていく。開発のDNAを次の世代に伝えることも、大きな役割だ。
コーヒーの飲み方は多様化しているが、缶コーヒーは「短時間で飲み切る」というニーズを捉え、その地位を確立してきた。「働く男性を中心に、短時間の気分転換の需要はなくならない。その上で、時代の変化にアンテナを張りながら、新たな飲み方やニーズに合う商品を提供していきたいと考えています」
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