ダイドー「デミタス」 甘すぎない微糖を実現した“変えない価値”:「甘さ控えた微糖」とは?(3/4 ページ)
ロングセラーの缶コーヒー「ダイドーブレンド デミタス」。その商品戦略を支えているのが、ダイドードリンコの土屋淳一さんだ。新商品「甘さ控えた微糖」の開発背景から、伝統を守り伝える土屋さんの仕事術を探る。
甘さを抑えて濃厚さを引き出す
潜在的なニーズを見込み、「いま、市場にはない微糖」を目指して開発した「甘さ控えた微糖」。この商品には、甘味料を使用していない。また、糖類は40%減らした。しかし、前述のように、缶コーヒーから砂糖を減らすと、コクがなくなる。それを補う甘味料も使っていない。では、どのように缶コーヒーとして商品を完成させたのだろうか。
「デミタスは“濃厚さ”が大切な要素。どうやって甘さを抑えながら濃厚さを表現するか、というところに壁がありました」と土屋さんは振り返る。
ポイントはコーヒー豆の量だ。「ダイドーブレンド デミタス微糖」でも、コーヒー豆の量を基準値(「コーヒー」と表示できる規格の下限値)の1.5倍に増やしている。今回はそれよりもさらに増量。増やした量は「数%」だというが、それが効いている。
しかし、豆を増やして味を濃くするだけで良いわけではない。味を濃くすれば苦味も増すが、ほどよいまろやかさも必要だという。開発を始めた当初は、「思っていたより苦々しいものができてしまった」。ブレンドする豆の組み合わせや焙煎方法によって、味は大きく変わる。それらを一から考え直し、100種類近くのブレンドを試作。試飲を繰り返した。
「豆の産地やグレードは無数と言っていいほどたくさんあります。それをブレンドする組み合わせや焙煎のやり方によって、思いもよらない味が生まれることもある。ブレンドの奥深さをあらためて実感しました」
さらに、デミタスシリーズは香料を使用していないことも特徴。ブレンドの工程によって、香りなどの個性を引き出すことも求められる。
難しい調整を重ねる中、味の完成に至ったきっかけは何だったのだろうか。土屋さんは「あるとき、突然『これだ!』というものができるわけではありません」と苦笑する。使用する5種類の豆を少しずつ入れ替えて試作し、理想の味に近づけていった。「パズルのように、一部分を変えながら試していきました。着々とゴールに向かって進んでいったイメージです」
目標とする味に向かって、少しずつ調整を重ねていく。その繰り返しによって、「甘さ控えた微糖」という言葉通りの味を完成させた。
「缶コーヒーは甘い味から始まり、現在は『微糖』が主力。さらに移り変わって『甘さ控えた微糖』のような味が主流になってもおかしくないと思っています。市場をこじ開けていきたい」と土屋さんは意気込む。
関連記事
- なぜケーキを飲み物に?「飲むショートケーキ」を飲んでみた
ダイドードリンコは11月28日から、JR東日本の自販機向け新商品「コクGrand time ふって飲む甘美なショートケーキ」を販売する。ビジネスパーソンが帰宅時間に求める「癒やし」需要を狙う。 - バスクリン若手社員が立ち上げた「銭湯部」の効能
入浴剤の老舗メーカーのバスクリンで若手社員が立ち上げた部活動「銭湯部」。廃業によって減っている銭湯を「盛り上げたい!」という思いから始めた活動だが、社内の世代間交流促進にもつながっている。その取り組みについて、仕掛け人に聞いた。 - 「ザ★チャーハン」が男性の胃袋をつかんだ理由
味の素冷凍食品の「ザ★チャーハン」が、冷凍チャーハン市場拡大に貢献している。中華料理店のチャーハンのような味や香り、独自性のあるパッケージはどうやって生まれたのか。担当した、マーケティング本部の田中宏樹さんに聞いた。 - 閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由
若い女性に人気の温浴施設「おふろcafe utatane」――。実は4年前までは年配の男性客が中心で、しかも赤字続きのスーパー銭湯だったという。おふろcafe utataneを運営する温泉道場の山崎寿樹社長はどのようにして施設を改革したのか。 - 「どうせ売れない」を覆した「もぎたて」大ヒットの理由
2016年に706万ケースを販売したアサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」。これまで、売れる酎ハイをなかなか生み出すことができなかった同社が、なぜ大ヒット商品を生み出せたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.