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「うなぎパイ」の会社が和菓子に力を入れる特別な事情社運を懸けた大変革(2/5 ページ)

年間8000万本も生産される「うなぎパイ」は、静岡・浜松を代表するお土産品だ。この菓子メーカーである春華堂が数年前から和菓子に力を注いでいる。その理由とは――。

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今までにない和菓子を!

 さて、冒頭のアワ作りに話を戻そう。

 これまで数十年にわたってうなぎパイが春華堂のビジネスを支え続けたため、元々の発祥である和菓子の部門は、うなぎパイに“おんぶにだっこ”だった。もちろん、その間も和菓子の新商品は出していたが、会社としても成長しているうなぎパイへどうしても力を入れるため、和菓子職人のモチベーションが低下するなどの行き詰まり感があった。

 また、同社だけでなく、日本では和菓子市場そのものが縮小していた。洋菓子に押されて、消費者が和菓子を食べる機会がどんどんなくなっていたのだ。それとともに職人の数も減少。製菓専門学校などで洋菓子のパティシエを目指す学生は多いが、和菓子職人になりたいという学生は少ないのだという。

春華堂の山崎貴裕社長
春華堂の山崎貴裕社長

 そうした負の流れを断ち切ろうとしたのが、山崎貴裕社長である。当時副社長だった同氏は、和菓子の再興なくして春華堂の成長はないと考え、2011年のうなぎパイの発売50周年を節目に、原点回帰の意味も込め、新たな和菓子ブランドを立ち上げることを決めたのだ。それが「五穀屋」である。

 「うなぎパイだけ作っていれば、効率的で、売り上げも利益も上がっていくでしょう。けれども、元々われわれは和菓子から始まって、良い和菓子職人もたくさんいます。それを生かし切れていない、チャレンジしていないという反省が経営陣にありました」(山崎社長)

 総工費31億円をかけた商業施設「nicoe(ニコエ)」を14年に開業するタイミングに合わせて、五穀屋とパイ専門店「coneri」という2つの新ブランドをスタートさせることにした。これは会社の将来を見据えた莫大な投資で、失敗は許されなかった。

浜松市浜北区にあるnicoe
浜松市浜北区にあるnicoe

 五穀屋のコンセプトは、穀物や発酵の技術を使ったこれまでにない和菓子を作ること。「穀物や発酵技術は日本で昔から根付いている食文化であるにもかかわらず、それを菓子に取り入れることはほとんどありませんでした。そこに挑戦することに価値がありました」と山崎社長は力を込める。

 その原材料として選んだ1つが、水窪のネコアシアワだった。地元のNPO法人や農家と連携して、春華堂の社員がアワの栽培を開始。「地元の素材を使うことで商品のブランド力が高まるし、地域貢献にもつながります。われわれは6次産業化を推し進めたいと考えており、今後はいろいろな穀物を地域の人たちと作っていければ」と山崎社長は話す。

ネコアシアワ
ネコアシアワ

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