大ヒット! 翻訳本『せつない動物図鑑』完成までの舞台裏:水曜インタビュー劇場(ジワジワ公演)(2/5 ページ)
翻訳本『せつない動物図鑑』が売れている。「翻訳本って日本語に訳すだけ。簡単にできるでしょ」と思われているかもしれないが、担当編集者によって出来栄えはかなり違う。『せつない動物図鑑』の場合、編集者はどのようなところに手を加えたのか。本人に聞いた。
原書『SAD ANIMAL FACTS』に注目した理由
土肥: 『SAD ANIMAL FACTS』の著者、ブルック・バーカーさんは現在オランダで住んでいて、イラストレーター兼コピーライターをされているんですよね。彼女のWebサイトに掲載されていたコンテンツをまとめた本がアメリカでヒットしたわけですが、金井さんはなぜこの本に注目したのでしょうか?
金井: 世の中で活躍しているスゴい人やスゴい動物って、よく取り上げられますよね。そうした情報を見た、聞いた人は「スゴい、スゴい」と感じる。でも、世の中ってスゴいモノばかりでは成り立っていないですよね。人間社会でいうと、私たちのような一般の人がいなければ成り立ちません。でも、そのような人を本で紹介しても、価値を生み出すことが難しい。
表舞台では活躍できていないかもしれませんが、どうすればスポットライトを浴びさせることができるのか。何かキャッチーな切り口を与えることで、光の当たる場所に出すことができるかもしれない。なぜこのようなことを考えていたのかというと、前職の高橋書店で『猛毒生物 大図鑑』の編集を経験したから。本の中で「この猛毒生物はこんなスゴい毒を持っている」といった感じで、その世界のエリートばかりを紹介していると、だんだん腹が立ってきたんですよ(笑)。エリートでない生物は「見た目がよくない」「たいした毒を持っていない」などの理由で、紹介できないんですよね。
そうしたエリートでない生物を表舞台に立たせるにはどうすればいいのか。たまたまバーカーさんのサイトを見ていると、マイナーな生き物が紹介されていたんですよね。これまで聞いたことがない生き物でも、ちょっとした情報を知るだけで一気に親しみがわいてきました。「すごい仕組みだなあ」と感じたので、このような形で紹介すると、多くの読者の心を打つはずだと思い、編集を担当することになりました。
土肥: 原書の『SAD ANIMAL FACTS』は、どちらかというと大人向けですよね。一方の『せつない動物図鑑』は子ども向け。編集するうえで、どのようなところから手を付けたのでしょうか?
金井: 『SAD ANIMAL FACTS』は、大人向けのサブカル本のような形で販売されていました。日本で大人向けの本として売ろうとすると、ものすごく大変だろうなあと感じました。なぜかというと書店で販売すると、生物の棚に置かれるかもしれません。でも、このような本を生物の棚に並べても埋没するはず。そもそも生物の棚には多くの人が足を運びません。では、多くの人に手にとってもらうためにはどうすればいいのか。児童書としてつくり直すことはできないかと考えました。
では、子どもが読んでもらうためにはどうすればいいのか。原書は大人向けなので、ものすごくシンプルなんですよね。各項目(動物)に見出しは書いているのですが、解説はない。本の後ろのほうにオマケページが付いていて、そこに解説が書かれている。こうした構成は子どもにはちょっと分かりにくいので、各項目に解説を掲載しました。
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