「一般職」を希望する高学歴が増えている その理由とは:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
このところ、企業側が想定していない職種に学生が就職を希望するケースが増えている。働き方改革が社会的テーマとなっているにもかかわらず、企業のカルチャーは昭和の時代からあまり変わっていない。しかし、若年層を中心に労働に関する価値観の多様化は着実に進んでいるようだ。
ここ数年、いわゆる一流大学を卒業した女子学生が、総合職ではなく一般職での就職を望むケースが目立つようになっているという。
これまでの就職活動においては、偏差値の高い大学を卒業した女子学生は総合職での試験を受け、それ以外の女子学生は一般職の試験を受けるというのが暗黙の了解となっていた。
正式な統計がないのではっきりとした数字は分からないが、著名企業における2017年の採用実績を見ると一般職の出身大学として、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学といった名前を多数、見つけ出すことができる。有名校の女子学生が一般職として就職するケースが増えているのは、ある程度事実と考えてよいだろう。
総合職ではなく一般職を希望する最大の理由は、転勤や長時間残業がないことだという。日本型の雇用環境においては、企業は総合職の社員に対して滅私奉公的な働き方を要求するケースが多い。最近は働き方改革によって長時間残業は抑制されつつあるが、それでも基本的なメカニズムは昭和の時代とあまり変わっていない。
日本型の雇用環境では、企業は社員をクビにせず、定年まで雇用し続けることが半ば義務付けられる。しかも賃金体系は基本的に年功序列であり、年齢が上がるほど年収も多い。つまり日本企業は常に人件費が過大になるという構造的要因を抱えていることになる。
こうした状況から戦後の日本企業では、常に少なめの人員で業務に対応し、繁忙期には長時間残業で人手不足をカバーする慣行が定着した。不景気の時でも解雇を避けるためには、社員の数を少なく保つ必要があったからである。人材を入れ替えることもできないので、事業を行う場所や事業内容が変わっても新規の採用や解雇は行わず、配置転換でカバーしなければならない。無制限の転勤が社員の間で受忍されてきたことにはこうした背景がある。
筆者もサラリーマン時代、住宅を購入した途端に転勤を命じられた人を何人も見てきたが、これは日本企業の仕組みそのものが原因となっている。
一部の学生が、昇進や給与を犠牲にしてもこうした職種を望まなくなっているのは、学生のキャリア選択における価値観が多様化してきたことが原因と考えられる。
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