清算された「ハブ」が、過去最高を更新している秘密:水曜インタビュー劇場(英国風劇場)(4/6 ページ)
「英国風パブ HUB」を運営しているハブの業績が好調である。2017年2月期の売上高は過去最高、18期連続で増収だ。かつて売上低迷で事業清算されたハブが、なぜ復活したのか。その理由について、同社の太田社長に話を聞いた。
ドミナント戦略がジワジワ効いている
太田: 英国のパブを見て「本物はこうだったのか」「中内さんが考えていたことはこういう店だったのか」といった気付きがあって、メニュー、接客、内装を見直すことに。97年、池袋に新しい形のHUBを出店したところ、爆発的に支持されました。ただ、1店だけでは分かりません。自分たちの勘違いかもしれないので、新宿の歌舞伎町に2店目を出したところ、そこも支持されました。
「これはいける!」と感じたので、98年以降はドミナント戦略にチカラを入れることに。乗降客数が1日10万人を超える駅を中心に、出店していきました。首都圏のほかに、関西、名古屋、仙台に進出しました。じゃあ、例えば広島はどうか? 「まだ早い」と思っています。
土肥: どうしてですか? 乗降客数を調べたところ……広島駅は14万人ほどですよ。
太田: なぜなら「HUBの認知度が低い」から。毎年調査を行っているのですが、HUBの認知度は50%ほどしかないんですよね。以前は20〜30%なので伸びているのですが、まだまだ。なぜ認知度が上がっているのかというと、ドミナント戦略がジワジワと効いているから。出店すると、お客さまが来店される。近隣エリアの人たちにもなんとなくHUBのことが伝わって、そこに店舗を出す。店を増やすことで、少しずつ利用される人が増えてきているのではないでしょうか。
土肥: 出店エリアで「HUBファンを増やしていく」わけですね。少しずつファンを増やした結果、売り上げは過去最高、18期連続で増収になったわけでしょうか?
太田: 飲食業で新しい業態を始めて、スタートダッシュに成功されているところがありますよね。いまの消費者のニーズをうまくつかんで売り上げをドーンと伸ばす。でも、そうした商売だと、18期連続で増収は難しいかもしれません。では、なぜハブはそうしたことができたのか。当社の場合、新しい店ができても、お客さまは「なんの店ができたのかな」といった感じで、ゆっくり進んでいくんですよね。まずは「パブとは何か」といったところからスタートする感じ。
いまは100店舗ほどなので、年に10店舗ペースで出店できればいいと思っています。このようなことを言うと、「たくさん出店して、売り上げがイマイチなところは閉店すればいいんですよ。20店増やして、ダメな5店を閉鎖する。でも15店増えることになる」とアドバイスされる。でも、私たちにはHUBと82の2つのブランドしかありません。新規事業を考えるよりも、パブ事業に特化していきたい。
というわけで、イケイケドンドンで出店しても、たった1つの店が失敗しただけでブランドを棄損するかもしれません。ブランドの棄損というのは、会社全体の棄損につながるので、きちんと人材を育成したうえで、出店していかなければいけません。
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