日本初の宇宙ビジネスコンテスト、大賞に輝いた女性の思いとは?:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
内閣府やJAXAなどが実行委員会となり、日本で初開催された宇宙ビジネスコンテスト「S-Booster 2017」。300件におよぶ応募の中から大賞に選ばれたのがANAの現役社員である松本さんだ。彼女のアイデアとは……?
日々業務をしている中で感じる課題から考える
まさかファイナリストにも残ると思っていなかったですし、他にもさまざまな優れたアイデアがあったので、大賞を受賞したことに私自身、非常に驚いています。
けれども、もし大賞を受賞できた理由があるとすると、それは航空業界で働いている自分が、日々業務をしている中で感じている課題から考えて、業界が何を求めているかをアピールすることができた点なのではないかと思います。他の最終候補者の方々の発表もすべて見ましたが、業界やビジネスの課題からアイデアを出している方は少なかったように思いました。
自分自身、課題に手触りがあって、それを何とか解決したい、良くしたいと思う熱意が、審査員の皆さんに伝わったのかもしれません。加えて、飛行機の経路・高度というテーマ自体が、審査員の方々も含め、一般の感覚でもその課題や効用が分かりやすかったことがあるかもしれません。
新規プロジェクトを起こしていきたい
大賞を受賞した後、いろいろな変化がありました。社内の役員が出席する経営戦略会議で発表の場をもらい、ANAの平子裕志社長から社長表彰もいただきました。私の所属しているフライトオペレーション推進部はどちらかというとバックエンド(運航をサポートする)側の部署なので、そうした業務に光が当たったことが嬉しかったです。
今回の受賞を知った同僚から「アイデアは多くの人が思いつくかもしれないけど、動くことが重要だね」とか「自分も来年応募してみたい」と言われて、職場の活気につながったのが良かったです。
私としては、何とかこのアイデアを実現していきたいと思います。ANAとしてはもちろん、航空業界全体にも貢献できるテーマだと思います。今現在、会社の中で新規プロジェクトとしての立ち上げを検討している段階です。
S-Boosterを通じて、普段の業務では会えない方々とたくさん出会えました。合宿でベンチャービジネスやプレゼンテーションに関する講習なども受けられましたし。また機会があったら応募したいと思います。
筆者自身、改めてインタビューという形で松本さんと話をさせていただいて、一番心に残ったことは「日々業務をしている中で感じている課題から考える」だ。衛星データの利活用の肝はこの一言にすべて集約されていると思う。松本さんのアイデアが近い将来具現化されていくことを強く応援したい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
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