トヨタとパナソニックの提携 ハイブリッドの未来:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
先週、トヨタとパナソニックが車載用角形電池事業の協業検討開始を発表した。そこにはパナソニックの生き残り戦略が見て取れる。
パナソニックの生き残り戦略
一方、パナソニックは三洋電機の取引を受け継ぎ、2011年からはテスラとの協業関係を築いている。今年1月にはギガファクトリーの建設運営に乗り出し、関係性を深めてきた。テスラは既にEVの代名詞となっており、出荷台数も急伸している。とはいえ、その生産台数は現状年産7.5万台程度。トヨタの1000万台とは比べるまでもないが、国内で最もグローバル生産台数が少ないスバルと三菱自動車が100万台であることと比べても10分の1にも満たずプレゼンスの不足は拭えない。
仮に数年後、スバルや三菱の半数が電動化したとしたら、その時点でのテスラの出荷台数を上回る可能性は十分にある。トヨタにおいては何をか言わんやである。パナソニックは、かつて提携を模索していたテスラとトヨタとの関係をテコにトヨタへのバッテリー納入を狙っていたと推測する向きもあったが、結果的に見ればトヨタはテスラの株式を手放し、関係は解消されてしまった。
右のアルミ製の箱がプリウスPHVのバッテリーパック。左に見えるエンジンと比べるといかにバッテリーが大きいかが分かる。特にリチウムイオンバッテリーの場合、追突事故で万が一電極同士が接触すると爆発的に燃焼するため、厳重なケースに入れられるだけでなく、プリウスPHVの場合、テールゲートをカーボン化してバッテリーを保護するなどの対策がなされている
電機メーカーは家電の崩壊によって、それぞれ生き残り戦略を立て、選択と集中を企図した。パナソニックの場合それは車載用バッテリーを含む自動車関連技術である。パナソニックにとって、テスラは今この瞬間、生命線とも言える大事な顧客だが、中長期で見たとき、社運を託すに足りるかどうかは何とも言えない。既にハイブリッドの累計生産で1100万台の実績を誇るトヨタとのパートナーシップはその未来を明るくするために最も可能性の高いオプションである。
パナソニックはトリッキーなハンドリングで、テスラとトヨタを両立させたように見える。もちろんそれはこれからの舵取りに負う部分は大きいし、モデル3の納品の大幅な遅れで、量産技術の不足が露呈しつつあるテスラの舵取りにも影響を受ける。もちろんトヨタが予定通り電動車を拡販できるかどうかにもよる。そうした混沌の中で選択された未来が、今回のトヨタとパナソニックの提携交渉開始の記者会見である。
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