2017年 試乗して唸った日本のクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
2017年も数多くのクルマがデビューしたが、全体を振り返ると日本車の当たり年だったのではないかと思う。改めて筆者が特に心に残ったクルマ4台のクルマをデビュー順に振り返ってみたい。
スイフト・ハイブリッド
カムリの試乗会の翌日に乗ったのは、スズキのスイフト・ハイブリッドだった。スイフトのハイブリッドにはストロングとマイルドの2種類があり、ここで挙げるのはそのうちのストロングの方だ。
スズキは、これまで諸説あったコンパクトカーのトランスミッション方式について最終回答を出した。それはマニュアルトランスミッション(M/T)をベースにコンポーネンツ方式になっている。ベースは、頑丈で安価で効率が良く、整備に技術もインフラも求めないただのM/Tだ。それに電動アクチュエーターを追加すれば、人間の代わりにクラッチとシフトレバー操作を行うオートメーテッド・マニュアル・トランスミッション(AMT)に。AMTの重大な欠点である加速変速時のトルク抜けによる失速感をデフに追加したモーターによって補うハイブリッドに。という3段階の方式で世界のニーズを全部満たしてしまう魔法の変速機だ。
要するに、インドなど新興市場で価格勝負をするためにはM/T。変速ショックを気にしない地域でのローコストなイージードライブニーズにはAMT。スムーズさや上質さを気にする国ではAMT+ハイブリッドということだ。このコンポーネント化でどれだけのコストが浮くかを考えると画期的である。
独創的かつ合理的なだけでなく、乗って走って素晴らしい。スイフトはAピラーがすっくと立ったフォルムで、コンパクトカーとしては異例にフロントウインドーのドライバーへの圧迫感が少ない豊かな空間を持っている。昨今のBセグメントでこういうクルマはほかにない。優秀な空間構築に加え、このクラスで飛び抜けた軽量ボディの恩恵で、走る・曲がる・止まるの基本性能が高く、燃費も良い。
ダンパーセッティングはスイフトの中でもグレードによって個別に変えられているが、このハイブリッドモデルに与えられたセッティングは、しつけの行き届いたよく動くサスペンションによって快適で柔和な乗り心地を持ちながら、運転して楽しい走りをも成立させている。庶民の生活を支えるアシとして素晴らしいと言える。ステアリングとペダルのオフセットが残念だが、そこさえ目をつぶれるならば、このクラスのベストだと言える出来だ。
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