仮想通貨で資金調達 投資家をどう守る?:規制か、それとも育成か(2/2 ページ)
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。
「ICO詐欺」から投資家をどう守る?
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。株式の場合、株主は経営方針に対する決議権(投票権)を持ち、株主総会などで経営陣に意見できるなど権利が保障されているが、ICOのトークン保有者にはこうした権利が保障されていない。
また、事業者を細かくチェックする第三者機関が存在せず、事業者と投資家が直接取引を行うため、企業やプロジェクトの安定性、信頼性などが担保しづらいというデメリットがある。ICOに対する法整備が進んでおらず、投資家が法的に守られないのが現状だ。
実際、「ICO詐欺」も各地で発生している。フィリピンで発行されたノアコインは「フィリピン中央政府の許可を得ている」と、政府関与を売り文句にしていたが、実際には政府が関与していなかったことが発覚。資金を集めやすくするために虚偽報告をしてICOを実施していた。この他にも、ICOで調達した資金をもとに実施する予定だったプロジェクトやサービスが始まらないといった事例も相次いでいる。
こうした事態を受けて金融庁は10月、ICOについて「高いリスクがある」と注意を喚起した。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。
ICOの普及は、新規ビジネスを生み出したり、起業を促進させる可能性を持つ。先進国の中で開業率が低く、イノベーションが起きないと言われている日本にとっては、ICOをうまく利用していきたいところだ。イノベーションの促進を妨げず、どう投資家を保護していくのか。しばらくICO業界の動向に目が離せない。
関連記事
- GMOインターネット、給料の一部を「ビットコイン」で
GMOインターネットグループが、給料の一部をビットコインで受け取れる制度を導入。順次グループ企業へと広げていく。 - 自分の価値を取引する「VALU」の存在価値は?
自分の価値を取引するという新しい概念を提唱した新サービス「VALU(バリュー)」。既に自身を“上場”した人は1万人を超えているそうだが、VALUとはどのようなサービスで、どのような可能性があるのか。改めて整理してみた。 - 加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。 - 3分で分かる「ブロックチェーン」最新事情
今年は国内で仮想通貨の法整備が進んだほか、ビットコインを利用できるサービスも続々と増えてきており、その認知度と期待度は加速している。それと同時に注目を集めているのが、仮想通貨を支えている技術「ブロックチェーン」だ。 - 将来稼ぐ力を予測する「AI融資」の狙いとは
ソフトバンクとみずほ銀行が、AIを活用した個人向けの融資サービス「AIスコア・レンディング」を展開している。同サービスでは、AIが利用者の「将来稼ぐ力」を分析し、適切な金利を決めているという。その狙いとは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.